創業43年目で株価が最高値を更新中〜世界最大のソフトウェア会社、マイクロソフトに何が起きたか?ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2018年09月06日 08時02分 公開
[上阪徹ITmedia]
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 ナデラCEOは自らシリコンバレーを訪れ、競合他社はもちろん、オープンソフトウェアの世界のエンジニアたちとも次々に提携を結んでいきました。かつては敵対してきた相手です。ソフトウェアの世界で圧倒的な力を誇ってきたマイクロソフトは、自社製品で全てをまかなう道を選んでいました。しかし、オープンでない姿勢は、結果としてマイクロソフトの取り組みを後手後手に回させることになります。ところが、これが変わるのです。

 社外はもちろん社内も驚いたのが、長年のライバル、アップルと手を組んだことでした。iPhoneは、マイクロソフトのアプリやサービスをたくさん使ってくれる素晴らしいデバイスだ、という位置付けなのです。オラクルも、セールスフォース・ドットコムも、同様です。オープンソフトウェアのLinuxまでクラウドビジネスの重要なパートナーになりました。

 しかし、競合から見れば、マイクロソフトのソフトウェアを使っているユーザーは世界で十数億人。魅力は大きいのです。さらにパソコン用だったWindowsはゲーム機のOSにもなり、IoT機器のOSにもなりました。多くが無料の完全なプラットフォームになりました。こうしてマイクロソフトは、ビジネスパートナーが広がれば広がるほど、クラウドで稼げることになる、という状況になりました。この大胆なシフトは、マイクロソフトがクラウド領域において世界で戦える数社の一角を担う存在に転換できたことを意味しています。

 何しろ、パソコンのOSで9割以上のシェアを持つ世界最大のソフトウェア会社なのです。他の企業と積極的にコラボレーションを始めたときのインパクトは計り知れません。しかも、マイクロソフトは先端技術でも大きなポテンシャルを持っていました。AI、ソフトウェアエンジニアリング、プログラミング、アルゴリズムなどで特許と論文がたくさんあり、優秀な人材がそろっていました。

 今、他社にない未来をつくる技術でも注目が集まっています。マイクロソフト発の技術、MR(Mixed Reality/複合現実)です。VR(仮想現実)だけでもなく、AR(拡張現実)だけでもない。物理的現実と仮想現実の2つの現実が融合したまったく新しい世界。

 このMRを実現しているのが、マイクロソフトが開発したデバイス「ホロレンズ」です。マウスもキーボードもいらず、ジェスチャーで操作。ホロレンズを介して見えるのは、バーチャルとリアルが一体化した世界。空間に3D画像が浮かび、Excelデータが浮かぶ。店舗づくりは、現地でバーチャルを組み合わせたイメージづくりが施工前に可能です。

 実はITをよく知る人たちの間では、マイクロソフトの評価はうなぎのぼりになっていました。しかし、一般の人にはほとんど知られていません。これは、とても残念なことでした。大きな組織の変革成功例としても、ポスト・スマホ時代の技術を知る上でも、マイクロソフトという会社に、もっともっと注目しておいた方がいいのです。

著者プロフィール:上阪徹

1966年兵庫県生まれ。リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスに。著書に『JALの心づかい』『社長のまわりの仕事術』『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNO.1大学になったのか』『10倍速く書ける 超スピード文章術』『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』など多数。インタビュー集に『外資系トップの思考力』『プロ論。』シリーズなど。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品も60冊以上に。


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