第2章では、「緊張のトリセツ」を紹介しています。
あがり症も口下手も、緊張の取扱説明書(トリセツ)通りにやれば、緊張しない人に勝つことができます。これから緊張のトリセツ通りにやってみましょう。
第一歩は、自分を知ることです。
緊張することにかけては誰にも負けなかった私ですが、音楽が好きで、ピアニストになりました。しかし大事なことを忘れていました。「ピアニストは、人前で演奏しなければいけない」人前でガタガタ緊張しながら演奏活動をしていましたが、まったくうまく弾けません。
そんな私は悩み抜いた末、あらゆるツテをたどって有名な先生にレッスンをお願いしました。最初のレッスンで先生はこう聞いてきました。「本番を録音したか」2回目のレッスンでも先生は聞いてきます。「本番を録音したのか? 何回聞いたのか?」
私はなぜ何も教えずに録音したかどうかを聞くのか、訳が分かりませんでした。あまり先生がしつこく言うので、「面倒くさいなぁ。自分でも分かっているんだけどなぁ」と思いながら、本番の録音を聞いてがくぜんとしました。聞いてみると、アガっていて、予想以上に下手なのです。聞くに堪えません。
「こんなのを、他人に聞かせていたんだ……」
自分が意図していることがほとんどできていませんでした。一方で自分の思い込みとは違うところもありました。結果が良いときは、最初の5分間に極度な緊張ではね飛ばされそうな気持ちをつないで堪えています。結果がダメなときは、最初の5分間でいろいろな失敗をして気持ちが切れてしまい、その後も雑でうまくいきません。
結果は最初の5分間で決まっていたのです。
その後、社長さんのプレゼンを診断する仕事を始めましたが、同じことが起こっていました。緊張する人は冒頭5分間で緊張のピークが来ます。そしてどんなに緊張している人でも最初の5分間を乗り切れば、後はなんとかなるのです。特に大事なのが、最初の3分間でした。
緊張する人は、「最初の3分間は、魔の時間」と覚えておいてください。この3分間を乗り切れば、5分間まで持たせることができ、その後、あなたの緊張を別世界に連れていってくれるようになるのです。
これまでは「緊張すれば失敗する。緊張は努力で克服するもの」と教えられてきました。「緊張は悪いもの」と考えられていました。これは宝物をわざわざ捨てているようなもの。緊張を生かせないのは当たり前です。大事な本番にのぞむとき、緊張で悩んでいるあなたは、正しい緊張の生かし方を知らないだけなのです。
ビジネスパーソンの皆さんも、緊張をなくそうとはせずに、緊張を生かすことであなたの思いを伝え、素晴らしいプレゼンを行ってください。
トップ・プレゼン・コンサルタント、ウォンツアンドバリュー取締役
桐朋学園大学音楽学部演奏学科卒業。極度のあがり症にもかかわらず、演奏家として舞台に立ち続けて苦しむ。演奏会で小学生に「先生、手が震えてたネ」と言われショックを受ける。あるとき緊張を生かし感動を伝えるには「コツ」があることを発見し、人生が好転し始める。その体験から得た学びと技術を、著書『緊張して話せるのは才能である』(宣伝会議)で執筆。
経営者の個性や才能を引き出す「トップ・プレゼン・コンサルティング」を開発。経営者やマネージャーを中心に600人以上のプレゼン指導を行っている。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授