ドラマ映画やドキュメンタリー作品など、今見てほしい作品を紹介タイムアウト東京のオススメ

東京の街の“ローカルエキスパート”が、仕事の合間に一息つけるスポットやイベントを紹介します。

» 2020年04月28日 07時16分 公開

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止による緊急事態宣言を受け、渋谷と吉祥寺の都内2カ所と、京都にも映画館オープンさせる映画会社「アップリンク」は、オンライン映画館アップリンク・クラウド(UPLINK Cloud)にて、配給作品60本以上が見放題となるサービス(3カ月2980円)を開始しました。

 今もなお外出自粛の状況が続く中、自宅をはじめとした環境での鑑賞の一助となるだけでなく、街の映画館を失わないための一支援として、過去の作品を見ることで生まれる映画の「(再)発見の場」となれば幸いです。

ラッキー(2017年):監督:ジョン・キャロル・リンチ

(C)2016 FILM TROOPE, LLC All Rights Reserved

 映画『パリ、テキサス』(1984年、ヴィム・ヴェンダース)での父親役が印象深い名優ハリー・ディーン・スタントン最後の出演作品。コーヒー、たばこ、ブラッディ・マリアを嗜好(しこう)する90歳の偏屈な独居老人ラッキー(ハリー・ディーン・スタントン)は、ある日自宅で倒れたことを契機に、迫り来る死へのいら立ちと恐怖に苛まれていきます。

 しかし、太平洋戦争に従軍した元海兵が語る沖縄戦での少女の話、あるいはメキシコの友人家族に招かれた誕生日パーティーで披露する「ボルベール、ボルベール」の歌によって、生きることの意味を改めて見いだすようになります。それは、自身を含めた目の前の存在が全て消え失せたとしても、ただこうしてほほ笑むことこそが生きる意味をより豊かにするのだということです。

 だからこそラストシーンで見せるカメラ目線のほほ笑みは、スタントンが映画の中で体現した生の象徴であり、遺作となったこの映画とともにいつまでも生き続けることでしょう。

ラ・チャナ(2016年):監督:ルツィヤ・ストイェビッチ

(C)2016 Noon Films S.L. Radiotelevision Espanola Bless Bless Productions

 「ヒターナ(ジプシー)の女帝」こと、ラ・チャナ(アントニア・サンティアゴ・アマドア)の過去と現在を追ったドキュメンタリー。絶えず彼女の足元から繰り出されるフラメンコのリズムと響きには、同時に静寂のひとときが存在します。

 これまで数々の大舞台に立ち、愛と情熱の舞によって観衆を夢中にしてきた一方で、「舞台の時間こそが唯一自由になれる場所だった」と語った際ににじみ出る、孤独や苦悩の時間なのかもしれません。人生に幾度となく立ち止まり、幾度となく立ち上がってきたチャナ。

 動から静、そして静から動へ。そんな彼女の膨れた膝小僧には、たゆまざる静と動を生きた彼女の人生が十全に物語られています。

顔たち、ところどころ(2017):監督:アニエス・ヴァルダ、JR

(C)Agnes Varda - JR - Cine-Tamaris - Social Animals 2016.

 フランスの「ヌーヴェルヴァーグ」を代表する女性映画監督アニエス・ヴァルダと、ストリートアーティストであるJRが共同監督を務めたドキュメンタリー。

 素朴な風景とともに暮らす人々(ときに動物)の顔や身体を求め、ヴァルダとJRは大型写真機が搭載されたトラックに乗って、フランス各地の農村地帯を放浪します。

 集った写真は引き伸ばされ、映ったものたち固有のさまざまな建物やオブジェへと貼られていくのですが、風景の一部=顔や身体となり得たとき、それらを見つめる者たちは想像力を働かせ、その光景から導かれし場所性を自ずと喚起するようになります。

 そして「顔探し」の果てにたどり着いたジャン=リュック・ゴダールの自宅を訪れる場面。不在の窓に書かれた「ドアルヌネの人々へ」で始まる置き言葉に対し、涙を浮かべるヴァルダの表情が忘れられません。

 想像力を働かせる身として、本作を見た後に問いたくなります。ヴァルダ亡き今、再会を拒んだ旧友ゴダールはいったいどんな表情を浮かべているのでしょうか。

 その他、「クラウドで見るべき映画5選」では、配信作品からセレクトした今注目の映画を紹介しているのでぜひチェックしてみてください。

著者プロフィール:タイムアウト東京 編集部

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