狭域での事業を通して思うコミュニケーション方法ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2020年09月03日 07時07分 公開
[加藤淳ITmedia]
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 リモートで済ませるべき内容とFace to Faceにする内容の仕分けをすることが、業務を進める上で大切なスキルになってきたのではないでしょうか。社外だけでなく社内のコミュニケーションでも信頼関係を築くために、いかに2つの手段を組み合わせていくかが重要です。

 今回のコロナ禍という非常事態で、会社や個人が取引先とどのような信頼関係を築けているかが平常時よりはっきり表れる場面が増えました。もちろん弊社や私との関係先でもうまくグリップできていなかったところはありますが、こんな時だからこそ普段からの信頼関係が生きた事例を紹介します。

 現在のコロナ禍において、ほとんどの自治体でも店舗支援策が喫緊の課題です。4月の尼崎市においても同じ状況で素早い施策が求められていましたが、既に経済部署では多くの施策の対応に人員が割かれていて、予算は付けられるがそれを執行するスタッフがいないという状況の中で、チケットリターン型のクラウドファンディング案が出ていました。

 ゴールデンウィーク休みに入る前日に初めて相談を受け、その時点でクラウドファンディングの知識はほぼゼロだったのですが、ここで生きたのが千葉県柏市、東京都江戸川区で同様のクラウドファンディングを先行で運営していたまいぷれパートナーとの関係でした。

 約130社あるまいぷれパートナー企業全てと親密なコミュニケーションを取れているわけではありませんが、この2社とは3カ月ごとに開催される全国のまいぷれパートナーが集まる会議などで何度も顔を合わせて情報交換をしている仲でした。2社から立ち上げや運営の方法を詳細に教えてもらい、制作機能を持っている江戸川区パートナーに制作物は発注することで予算と納期の圧縮を実現することのめどが立ちました。

 その後、尼崎市とは5月3日に初めて具体的な立ち上げの打ち合わせをしてから、「あま咲きチケット」と名付けた店舗支援施策は5月10日には参加店舗募集のプレ告知スタート、6月1日からのクラウドファンディングスタート、6月中旬に中間金を立て替えで店舗へ振り込みと、尼崎市からは「衝撃的なスピード」と評価される動きになり、目標額1000万円を大きく超える約9600万円の支援金を集めることができました。

 尼崎市とはこのクラウドファンディング事業の前から、いくつか委託事業でお付き合いをしていたのと、別の新規事業での打ち合わせをしている中でのコロナ禍でした。それまでの事業運営や打ち合わせで築いた信頼関係をベースに、非常事態の相談相手として声が掛かり、市も予算の専決処分や補正予算での増額などスピードも含めて大変頑張って支援を整えてくれ、官民協働の良い動きになったと思います。(事業は12月末まで継続中)

 今後もリモートワークが進む中で信頼関係を築くには、最初や最後で抑えのFace to Faceがやはり重要なポイントになるのではないでしょうか。これがグローバルな大企業まで全てにあてはまるとは思いませんが、ローカル中心の会社や社内のコミュニケーションでは、ここぞという時により重要性を増してくるような気がしてなりません。

著者プロフィール:加藤 淳

1988年 リクルート入社。西日本人材開発部(新卒採用)、西日本経理部を経て、関西住宅情報事業部へ。全く業績の上がらない営業マン時代を2年ほど過ごした後に連続達成、売上ギネスを記録。1999年リクルートを退職、ケイオスに入社。商業コンサル業務の一方、新規事業立ち上げを準備して2000年 シー・ブラッド設立。マンション・ニュータウンでのコミュニティ形成支援事業を手がける。2007年新規事業「まいぷれ」の運営を「いたみん(伊丹市版)」で、伊丹市役所との官民協働事業としてスタート。2009年シー・ブラッド退職。2010年 まいぷれwithYOUを設立して「まいぷれ事業」をスピンアウトで買収し、専業会社として運営開始。伊丹市・尼崎市・宝塚市のまいぷれパートナー企業として地域ポータルサイト運営の他、自治体との官民協働事業として地域共通ポイント「いたポ」(伊丹市)・「まいポ」(尼崎市)の運営、伊丹市ふるさと寄附業務の受託運営を行っている。プライベートでも少年野球の部長、中学校のPTA会長、マンションの大規模修繕委員長、自治会長などを経験し地域と関わっている。


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