なぜ自分自身の感情の把握が必要か? それは、人の感情は組織のパフォーマンスに大きく影響するからです。思い返してみてください。あなたは不安を感じた時、言動がつい攻撃的になる、または言いたいことが言えなくなるなど、普段と異なる行動になることはありませんか? 会議で自分だけ知らないことがあるという疎外感を感じた時、孤独感で心がいっぱいになってしまったり、または信頼を裏切られたれ虚無感でいっぱいになったりすることはありませんか? 人にはそれぞれ、「特定の感情」が引き起こす思考や行動のパターンがあります。そして、こうした「感情」が引き起こす行動は、周囲の人にも影響を与えます。だからこそ、「自分の感情」と思考のパターンを把握しておくことが大切なのです。
人は、「感情」に押しつぶされそうになった時、冷静になるためにあえて1人で考える時間を取ったり、相手に理解してもらうためにあえて「感情」をあらわにしたりと、それぞれの方法で気持ちを表現しています。相手のことをもっと知りたい時には、自己開示の率を高くして相手との信頼関係を構築してから交渉をするなどの行動選択をとることもあるでしょう。この一連の取り組みは、「自分の感情」認識をベースに、「ありたい姿」に向けて適切な行動を選択する「感情のマネジメント」にあたります。
よく、「感情的な人間はビジネスには必要ない」と言いますが、「感情的な行動をする」ことと「感情を認識して適切な行動をする」ことはまったく別です。EQで目指しているのは、後者にあたります。
「自分の感情」を認識し、それに応じて適切な行動を選ぶことで、目標達成やより良い人間関係の構築につながっていきます。自分やチームの目標や「ありたい姿」の達成は、日々の小さな行動の選択と実行によって作り出されます。この日々の行動を「自分の感情」を受け止めることからスタートし、自分のありたい姿や他者とどのような関係性を築きたいかに合わせて行動を選択し実行する、これがEQの開発なのです。
EQは後天的に開発することができます。読み書きを身に着け高め続けるのと同様に、一度習得したものも意識的にトレーニングによって磨き、高め続けることができるのです。
「EQの発揮がリーダーに必要なのは分かるが、なぜ“自分の感情”が必要なのか? メンバーの感情が分かればよいのでは?」という質問をよく受けます。人間は感情の生き物です。それはメンバーも、そしてリーダーである自分自身も同じです。たとえ、職場で感情的な発言をしたり、逆に感情をあらわにしたりするようなことがなかったとしても、人間の行動や言葉を根底で突き動かしているのは「感情」です。「自分の感情」が分からない人に、「他人の感情」を受け止め、共感し、適切に対応することはできません。そのため、私は「感情は経営資源」と捉えています。リーダーとして「感情」に着目し、EQを発揮してチームで成果を創ること、これが経営への大きなインパクトにつながります。
近い将来、リアルな職場であれ、オンラインであれ、“How do you feel? (今、どんな気持ち?)”というあいさつが互いに交わされるようになることは、各組織でEQが発揮されている一つのサインとなります。働く人誰もがまず自分の感情を大切にすることで、「心豊かに働く」ことを実現する、これが私が追求したい「ありたい姿」なのです。
アイズプラス 代表取締役
学校卒業後、ECC外語学院で講師・学校運営など経験後に、マスターフーズ(現マースジャパン)に人事職で入社後、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、日本ポールで人事職を中心に担当する。2015年、法政大学経営大学院にて経営学修士(MBA)を取得。子育てと仕事の両立を目指し、2016年、大学院在学時にアイズプラス社を設立。IC(インディペンデント・コントラクター)として独立を経て、現在は株式会社化してパートナーシップによる協働プロジェクトで企業の人事、経営課題の解決に取り組んでいる。組織向けにコンサルティングを提供するなかで、EQ(感情知性)の重要性に気付き、以降、制度設計、人材・組織開発、キャリアデザインなどにEQを取り入れたプログラムを独自に構築し、提供を開始する。2019年、日本初のEQオウンドメディア「EQ+LAB.」を立ち上げ、国内外のEQ関係者を巻き込みながら「心豊かなポジティブチェンジの場と機会づくり」に取り組んでいる。自社の経営の他、山野美容芸術短期大学特任教授、IC(インディペンデントコントラクター協会)理事、NPO法人キーパーソン21アドバイザーなども務める。著書:『感情マネジメント』ダイヤモンド社。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授