東京、文化財レストラン3選タイムアウト東京のオススメ

東京の街の“ローカルエキスパート”が、仕事の合間に一息つけるスポットやイベントを紹介します。

» 2023年02月21日 07時00分 公開

 長い歴史の中で育まれ、今日まで守り伝えられてきた文化財。とりわけ東京には、明治から昭和初期に建てられ、当時の面影を残す建造物が点在します。中には建物の中で食事や酒を楽しめる文化財もあります。

 ここでは東京都選定歴史的建造物に選定されたスパニッシュレストランや、登録有形文化財建造物となった日本最古のビヤホールなどを紹介。美しく時を重ねた空間を五感で堪能してみてはいかがでしょうか。

Photo: Keisuke Tanigawa

 「小笠原伯爵邸」は、小倉藩主であった小笠原家30代当主・小笠原長幹伯爵の本邸を修繕し、往時の雰囲気をそのまま残すスパニッシュレストラン。建物の創建は1927年。設計は、大正から昭和初期にかけて数多くの和洋折衷様式の建築を手掛けた「曽禰中條建築事務所」。日本では希少な完成度の高いスパニッシュ様式の邸宅で、噴水付きの中庭やクリーム色の外壁、鉄製の飾り格子などを特徴としています。2004年、東京都選定歴史的建造物に選定されました。

 シガールームは、ビクトリア王朝で流行したイスラム風デザインを採用。大理石のモザイクタイルの床やしっくい彫刻の壁面など、芸術の粋を結集しています。

 華麗な空間で供されるのは色彩豊かなモダン・スパニッシュ。スペインならではの食材と日本各地から取り寄せた和素材を融合させた、独創性あふれる料理が楽しめます。スペシャリテのイベリコ豚は柔らかくジューシーで、その風味に驚くゲストも多いそうです。日本では珍しい希少部位も用意されています。

 ランチ・ディナーともにコースのみの提供。いずれのコースにも魚介や肉のだしで仕立てた米料理を入れるのも特徴です。

Photo: Keisuke Tanigawa

 「メゾン・ド・ミュゼ」は青山の閑静な住宅街にひっそりとたたずむ、アールデコ様式の邸宅レストラン。もともとは、資産家の千葉直五郎が、長男・常五郎への結婚祝いとして1934年に建てた洋館でした。鉄筋コンクリート造りの2階建てで、地下にはプールもありました。総工事費は33万円。当時の大卒初任給が約50円だったことから、いかに桁外れの額かが分かります。2018年に渋谷区の有形文化財に登録されました。

 さまざまな事情により常五郎はこの邸宅を手放すことになり、1981年に会員制レストランとして生まれ変わり、2021年にはフレンチレストラン「メゾン・ド・ミュゼ」が開業。伝統を踏まえつつも、新たな感性を取り入れたメニューをランチとディナーで提供しています。

 今でもアーチ状の車寄せや優美ならせん階段など、大正建築のレトロモダンな意匠を随所で感じることができます。中でも、アールデコの巨匠・エルテの作品所有数は世界一。かつてプールがあった場所はワインセラーとして使われ、希少なビンテージワインを貯蔵しています。2階の個室や屋根裏部屋はメンバーズクラブ会員専用のラウンジとなっています。

画像提供:ビヤホールライオン 銀座七丁目店

 サッポロビールの前身である「大日本麦酒」の本社ビルとして1934年に完成した「銀座ライオンビル」。ほぼ同時に1階にオープンした「ビヤホールライオン 銀座七丁目店」は、当時としては贅(ぜい)をつくした造りであることから、建築家から絶大な称賛を集めました。

 戦時中、多くのビヤホールは空襲により焼失したり取り壊されたりしたが、同店は奇跡的に戦火を免れました。1945年には連合国最高司令官総司令 (GHQ)に接収され、軍専用のビヤホールとなりました。1952年に接収が解かれ、一般客の利用が可能に。現存する日本最古のビアホールとしても知られています。

 内装のコンセプトは「豊穣(ほうじょう)と収穫」。豊かな実りが感じられる大麦やブドウをモチーフとした装飾が所々に施されています。まるで教会のような重厚な風格は圧巻。2022年2月、国の登録有形文化財建造物に登録されました。

 「琥珀ヱビス プレミアムアンバー」「白穂乃香(しろほのか)」「エーデルピルス」などのサッポロビールの豊富なラインアップの生ビールが楽しめます。歴史が詰まった空間で上質なビールをたしなみながら、激動の時代に思いをはせてみては。

 『東京、文化財レストラン5選』では、さらに多くの都内の文化財レストランを紹介しています。是非チェックしてください。

著者プロフィール:タイムアウト東京 編集部

タイムアウト東京は、ロンドンを中心に、ニューヨーク、上海、クアラルンプール、テルアビブ、アムステルダム、シドニーなど、世界108都市39カ国に広がるメディア、タイムアウトの東京版です。「本当に素晴らしいものは、世界のどこであれ誰であれ感動を与えてくれる」という考えの下、日本の優れたヒト、モノ、コト、コンテンツ、サービスを英語・日本語のバイリンガルで発信しています。


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