多様性で人の成長と組織の価値最大化に取り組むリクルートのデータ組織デジタル変革の旗手たち(2/2 ページ)

» 2023年10月17日 07時06分 公開
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 「ガードレール」には、データ推進室独自のもの、セキュリティ組織と一緒に定義したものなどいくつかがある。例えばセキュリティルールでは、全社的なセキュリティルールに加え、データ推進室独自の「データウェアハウスは、このように使うと安全」などの管理ルールを設定し、運用している。またクラウドサービスでは、インターネット接続のルールを細かく設定し、クラウドサービスの新しい機能が登場した場合、ルールを加えるなど、適時更新され、強化されているという。

「上」だけでなく「横」へも、メンバー一人ひとりの成長が組織の価値を高める

 リクルートは、創業以来、「個の尊重」を重要な価値観と位置付け、多様な従業員一人ひとりの違いを重視してきた。

「リクルートには、さまざまなメンバーがいます。働き方に関しても、リモートワークで1人で仕事をしたいメンバーもいれば、オフィスに来て大人数で働きたいというメンバーもいます。個性あふれるメンバーが多いので、あるがままに多様性を受け入れ、多様な強みを活かすことが大前提です。全てを画一化することで管理はしやすくなるのだと思いますが、失うものも多いと考えています」(阿部氏)

 例えばクラウドサービスを利用する場合も同様で、1つのサービスに統合することで運用も楽になり、コストも最適化できる。しかし複数のクラウドサービスを使ってみないと、それぞれの良い面、悪い面は分からない。「実際に使うことで見えてくることもあります。その経験、手触り感を大切にしています。働き方も同じで、1つのルールにすれば管理は楽ですが、多様性を許容することで経験値を何倍にも増やすことが期待できます。ただルールは必要で、働きやすさやコストなどのバランスも重要です」(阿部氏)。

 人材の流動性を大事にしていることも同社のデータ組織の特徴の1つだ。勉強会などの形式化された言語だけでスキルを伝えるより、経験者を異動させたほうが継承しやすいこともある。「最大のポイントは、メンバーの成長を最大化することです。メンバーを他の領域に再配置するときも、事業の成長はもちろん大切ですが、個々のメンバーがこの異動で成長できるかを同時に考えます。メンバー1人ひとりが成長することで、組織としての価値の総量が大きくなるので、それを第一に考えています」と阿部氏は話す。

 また組織として、いかに経験値を増やしていくかも意識している。統合前は領域をまたいだ交流は難しかったが、会社統合によりそれができるようになった。成功事例はもちろん、失敗事例から得られる経験も得難いものだ。こうした経験を次の成功につなげていくことが重要で、組織全体で学びを最大化している。

 「リクルートは、もともと、人材育成に多くの投資をしてきた会社です。例えば、組織長がメンバーの育成にかける時間は、年間約300時間。半年に1度行われる人材開発委員会では、全ての職位の従業員1人ひとりの育成方針について検討します。各個人の成長に向けて、どのような機会を提供していけるとよいのかを、直属の上長だけではなく、組織の管理職全員で、議論、確認しています。機会の一つである異動では、データサイエンティストが、データエンジニアや機械学習エンジニアへと専門性を変えたり、兼任したりすることも推奨しています。上への成長だけでなく、横への成長も人材育成の大切なポイントです。また、”よもやま“と呼ぶ1 on 1も、育成のための大切なコミュニケーションと位置付けています。目標に対する達成度や改善点などをフィードバックし、対話しています。

聞き手プロフィール:浅井英二(あさいえいじ)

Windows 3.0が米国で発表された1990年、大手書店系出版社を経てソフトバンクに入社、「PCWEEK日本版」の創刊に携わり、1996年に同誌編集長に就任する。2000年からはグループのオンラインメディア企業であるソフトバンク・ジーディネット(現在のアイティメディア)に移り、エンタープライズ分野の編集長を務める。2007年には経営層向けの情報共有コミュニティーとして「ITmedia エグゼクティブ」を立ち上げ、編集長に就く。現在はITmedia エゼクティブのプロデューサーを務める。


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