東京の街の“ローカルエキスパート”が、仕事の合間に一息つけるスポットやイベントを紹介します。
10月はグラフィックデザインの展覧会が目白押しです。日本の広告界をリードする大貫卓也や花森安治の展覧会はもちろん、注目の若手デザイナー・上西祐理の展示、写真植字の歴史を学べる展覧会も見逃せません。
グラフィックデザインを多角的に楽しめる機会に、ぜひ足を運んでみてください。
「世田谷美術館」では、アートディレクターの大貫卓也(1958年〜)と花森安治(1911〜1978年)の仕事に着目した展覧会を開催。本展では近年収蔵した2人が手がけたポスターのほか、グラフィック関連資料を中心に紹介しています。広告の価値と可能性を追求してきた2人の広告表現の魅力を探っていくものです。
世田谷在住の大貫は、批評的な視点で広告業界に衝撃を与えた「としまえん」の仕事で「東京ADC賞」を受賞し、その後数々の話題作を生み出しています。表紙画からカット、レイアウトまで全てをこなす花森は、独自の美学を貫き、雑誌『暮しの手帖』の表紙画やカット画などを手がけました。一見異なるようで共通する2人の表現方法を垣間見てください。
「アートディレクターの仕事 大貫卓也と花森安治」は2024年10月14日まで、世田谷美術館で開催しています。
次に紹介するのは、アートディレクター兼グラフィックデザイナーである上西祐理の現在地を紹介する展覧会「Now Printing」です。2024年10月23日まで、ギンザ グラフィック ギャラリーで開催しています。
上西は、多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業後、電通に入社し、11年間の勤務を経て2021年に独立しました。その後デザインスタジオ「北極」を立ち上げ、ポスターやロゴなど単体の仕事から、ブランディングやキャンペーン、映像、空間、本、雑誌など仕事は多岐にわたります。
上西の代表作の一つである「世界卓球2015」のポスターは、高速に球が行き交う卓球の動的瞬間を見事に紙面に定着させ、デザイン界にその存在感を見せつけました。「強いワンビジュアルを作ること」が得意だと語る上西は旅行が好きで、旅先で見つけたものをじっくり観察することが彼女のデザインの源になっています。
本展は、ギャラリーの1階に新作の印刷物が展示され、地階にはこれまで上西が携わった仕事のアーカイブが並んでいます。上西の創造の源泉を垣間見られる貴重な機会を見逃さないようにしましょう。
印刷技術に興味があるなら、「写真植字の百年」展もおすすめです。2025年1月13日まで印刷博物館で開催中。活版印刷からデジタルフォントへと文字印刷の橋渡しを担った写真植字の発明から100年を記念し、その歴史・役割・仕組み・書体デザインについて紹介しています。
写真植字とは、写真の原理を応用して文字を印字、組版をする技術です。1枚の文字盤からあらゆる文字を作り出せる写真植字の登場は、それまでの活版印刷の煩雑さを解消する革新的な出来事でありました。戦後の普及とともに写真植字機の技術はより改良され、さまざまな機能が加えられていきます。その使いやすさから、印刷業の職場環境が大きく改善され、さらに美しく多様な書体の開発が広告や書籍を彩るようになりました。
なお、文化の日の11月3日(日・祝)は入場が無料。この機会に、デザインや出版業界に大きな変革をもたらした写真植字の世界をのぞいてみてはいかがでしょう。
「東京、10月にグラフィックデザインを考える展覧会3選」では、さらに情報を紹介しています。是非チェックしてください。
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