「30代で修羅場をくぐり人間力を鍛える」――日本エリクソン・坂田氏エグゼクティブ会員の横顔

ITと通信の融合が急速に進んでいる。IT業界から通信業界へと転身した日本エリクソンの坂田氏は、これまで培ってきた経験と行動力でマーケティングを推進してきた。

» 2010年10月22日 14時33分 公開
[聞き手:福盛田 結花,ITmedia]

 ITmediaエグゼクティブの会員に対するインタビュー企画「エグゼクティブ会員の横顔」。第10回は、世界中の通信システムを高い技術力でサポートし、移動通信や固定通信システムのリーディング・サプライヤとしてグローバルに事業を展開しているエリクソンのコミュニケーション、広報担当部長 坂田容子氏に話を聞いた。

――現在の業務内容を教えて下さい。

坂田 主に社外向け広報を担当しています。エリクソンと聞くと携帯端末の開発、販売を行っているソニーエリクソンの名を思い浮かべる方が多いかと思いますが、エリクソンとソニーとの合弁企業です。エリクソンはスウェーデンに本社を置く通信機器・ネットワークビジネスの会社で、約130年の歴史をもっています。B2Bの、業態でもあり日本ではあまりエンドユーザーにブランドが浸透しておらず、その改善が広報の課題でもあります。今まではインフラのハードベンダーという色が濃かったのですが、今後は、通信に関わるすべてのソリューションを統合推進していくという視点で市場に関わっていく戦略を強めています。

坂田容子氏

 2009年からはロゴが変わり、ブランド・イクスプレッションにレインボーカラーが加わって華やかになりました。人々の生活にかかわるすべての通信を支えるという新しい方針に従って、会社全体でブランドを推進しています。

――社会貢献活動にも力をいれていますね。

坂田 エリクソンは社会貢献活動にも熱心です。たとえば、コロンビア大学が国連と一緒に実施している、極度の貧困を撲滅するミレニアム村プロジェクトでは、サハラ以南アフリカ地域の10カ国で最先端の移動体通信およびインターネット接続を提供しています。以前は、放牧の途中にある水飲み場の情報を得たり、家畜の価格を知るために50キロ歩いて市場まで行ったりしていましたが、現在では携帯電話で市況を把握できるようになりました。このように情報を入手することは経済的な向上や生活の安定化をサポートできます。また、2000年に発足したエリクソン・レスポンス・チーム(救援チーム)は災害時に通信の素早い普及や知識は重要であるという理念を基に、国連などの国際機関と提携しています。今年1月のハイチ地震のときも、国連の要請によって最初に駆けつけました。

 日本独自の取り組みとしては、エリクソンアワードを実施しています。1997年に開始し、通信技術の発展を促進する目的で、日本の通信、情報分野で活躍した研究者を1人、これからの技術を担う32歳以下の若手研究者を4人選出し、賞金を授与しています。

 グローバル企業なので、このような世界での動き、情報が身近にあるのは貴重な経験で、ありがたいと思っています。マーケティング担当者同士の交流も頻繁にあり、同じ情報に対しても国ごとに反応が違っていたり、他国の成功事例を取り込んだりなどさまざまな動きがあり、グローバル企業の醍醐味を日々体感でき、世界が近くなったように思いました。

――これまでの仕事の歩みについて教えてください。

坂田 最初はUNIXをお客様、新人に教える教育担当からスタートしました。UNIXというOSが気に入っていたのでその後サン・マイクロシステムズに入社し、最終的にはトレーナーをトレーニングする仕事をしていました。その後、UNIX入門の書籍も2冊出版しました。これがきっかけで読者に情報を伝えることのすごさ、活字化することの重さに興味を持ちました。

 今でこそ個人の情報発信が活発な世の中ですが、だからこそメディアが発信する記事の重みは増していると思います。次に、興味を持ち始めていたデータベースのソフトウェアベンダーであるサイベースに入社しました。当初は教育担当で入社したのですが、製品、データベース技術、システム管理などサイベースが持つ製品ライン全般の知識を持っていたため、全体的な視点から外部に情報を提供できるということで、広報担当になりました。前任者が着任前に退職していたので、記者、他社の広報担当を師匠として学びました。

――転機となった出来事として印象に残っていることはありますか。

坂田 30代半ばに日本で立ち上げたばかりの会社に参画したとき、5月初旬に入社し、その後1カ月半後に展示会への出展と、会社の発足記念パーティーをひとりで実施したことです。

 入社後すぐに本社にヒアリングに行き、帰国後業者の選定、ブースデザイン決定、並行して発足記念パーティーのための会場選定、お客様への招待状手配を行い、6月下旬に展示会、パーティーを立て続けに実施しました。無事終了したので良かったのですが、当時は寝る間も無く、修羅場とはこのことかと思いました。その後を振り返ると、この修羅場を30代のときにくぐっておいて良かったと感じています。このときのことを思えば多少無理な要求があってもなんとかなりますし、とりあえずは声をきき、現状把握、分析、プラン、並行して実際に調整を行う、という自分の業務プロセス作りのスタートになりました。さらにイベント、展示会の実施、マーケティング・コミュニケーションなどマーケティング全般に業務範囲が広がりました。これらの経験のお陰で、マルチタスクが可能という自分の強みを周りが認めてくれるようになったと感じます。

――コミュニケーションで気を付けていることはありますか。

坂田 「ありがとう」を最初に言うことです。感謝の気持ちは声に出して伝えるようにしています。海外のメンバーとのコミュニケーションは意思を簡潔に伝えるようにしています。電話での会議も多くなりがちですが、だからこそ対面でのコミュニケーションが極端に減ることがないよう気をつけています。

最近読んだお薦めの本:

上橋菜穂子 『精霊の守人』シリーズ

スティーグ・ラーソン 『ミレニアム』シリーズ


ストレス解消法:

家の掃除と読書です。見苦しいものを一掃して片付けていると、収めるところに収めていくと気分がすっきりします。きれいになった部屋で、好きなお茶を飲んだり、本を読んだりするのが至福の時間です。

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