最後に操縦技術では、ドローンは簡単に飛ばせるものの、航空の知識を有する人材の育成には非常に時間とコストがかかる。小関氏は、「飛行機のルール、ヘリコプターのルール、気象の知識など、航空関連の知識を持っているか否かが、プロパイロットとしての一つの分岐点だが、そもそもそのような人材に頼らざるを得ないこと自体が課題」と話している。
現在、アイ・ロボティクスでは、山岳捜索にドローンを活用している。小関氏は、「山岳遭難者数は、年間で3000人程度になる。その内、警察による捜索では見つからない、死者、行方不明は、300人程度である。従来この300人は、遭難対策協議会や、日本山岳救助機構などがボランティアに近い形で捜索していた。山岳捜索は、その市場規模から産業界に大きな影響を与えるものではないが、ドローンだからこそできる社会貢献の一環として重要な取り組み」と語る。
「あるテレビ番組でも紹介されたが、ヘリコプターで見つからなかった遭難者を、ドローンで見つけることができた。使った機材は、最も一般的なものである。理由は、高性能で低価格だからである。山岳捜索では、ドローンが墜落したときに回収できないこともある。そこで低価格な機材を利用している」(小関氏)
ドローンを利用するメリットは、まず上空80メートルからでも川で泳いでいる魚を確認できることがある。また、人が山を分け入って1日掛かりで到達するところに、ドローンであれば10分で行ける。その一方で、山岳捜索にも課題はある。例えば、操縦可能なスペースを確保することが必要。関係各所と事前に調整をし、国有林などの通行許可も必要になる。
また、操縦のために木に覆われていない開けた場所を探すことが必要。送電線もドローンには不利になるが、ヘリコプターはもっと危険なので、送電線の近くこそドローンの利用が有効になる。さらに、携帯電波が届かないという通信の制約とか、電源環境が確保できないどか制約もある。
「その他にも飛行の制約として、ドローンの飛行位置をリアルタイムに確認できない場合、高度なカメラ知識や測量知識が必要。製品によっては距離4キロ、高度500メートルの範囲に限定されるなどの課題もある。季節や時間帯もかなり限定され、夏は木ややぶが茂り地面がほぼ見えなくなるなど、さまざまな課題がある」(小関氏)
ドローンをビジネスに導入するための基本ステップを小関氏は、次のように語る。「無人機市場の今を知る“調査インテリジェンス”、社内で啓もう活動をする“教育エンライトニング”、課題と解決方法を検討する“検討ソリューション”、実現手段を検討する“導入プラットフォーム”の大きく4つとなる」
このとき、調査インテリジェンスでは「前例が少なく先行者になるリスク」が、教員エンライトニングでは「人材育成におけるリスク」が、検討ソリューションでは「社内規定や品質保証のリスク」が、導入プラットフォームでは「ホールプロダクトが存在しないリスク」があることを理解しておくことも必要になる。
小関氏は、「近年のIT活用による産業構造変化では、音楽業界で配信方法がCDからネット配信へと、ニュースは紙媒体からネット配信になり、現在はアプリによる配信へと変化している。既存の産業はいったん解体され、必要なものだけを再統合し、サービスとして大衆化するプロセスをたどる。ドローンも同じで、どの分野でどのように有効になるかを、しっかりと見極めなければならない」と話している。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授