私の経験ですが、女性は男性に比べてコンフォートゾーンから出るのをためらうことが多いと思います。新しい仕事や機会に男性なら「はい、分かりました」としか言わないところを、「さて、それができるか分からない」と先を読んで考え込んでしまう。
これをインポスターシンドロームというのですが、男性に比べて失敗を恐れる傾向が強いようです。それは失敗して会社に迷惑をかけたくないということと同時に、失敗して自分が叱られたり、周りから「失敗した」と見られたりすることがいやなのではないでしょうか。そこで、新しい案件がきたときに、先を読んでいろいろ聞いてくるのだと思います。
しかし、それは業務を進める上で必要な確認です。「取りあえずやってみて」と目的を明確にせず、もしくは目的を共有せずに始めるほうがよほど無駄が多い。本来これでは上司ではありません。職場の人間をマネージすることが仕事なのですから、男性女性に関係なく、その仕事の意義、求められるべき成果、どんな関係者を巻き込みどう動くかなど、きちんと説明しなければいけません。
オヤジ上司は頭のどこかで「女性は感情的になる」「論理的に話ができない」と思っているふしがあります。たいがいそれはコミュニケーション不足から生まれるもので、私も過去に何度も失敗してきました。「分かってくれるだろう」ではダメなのです。私は講演会などで「上司から部下への報告が必要です」といつも話しています。
もともと、総じて女性たちのほうが真面目で地頭がいいということには賛同してもらえると思います。さらに、女性たちには「女性ならではの武器」というべきものがあります。華やかな笑顔、コミュニケーション能力の高さ、記憶力のよさ。自分のお金で旅行に行ったり、新しくできたスポットに出かけたり、新しいことに対して貪欲です。毎日メイクをして服を選び、仕事終わりには習い事にも行く時間調整の能力もあります。こうした美点をどんどんビジネス上でも伸ばしてあげる上司でありたいと思いませんか
女性部下にも意識して新規案件を振りましょう。「失敗してもいいんだ」ということを十分理解してもらい、彼女たちの背中を押してあげましょう。
本書は前向きに仕事に取り組んでほしいという意味で女性に読んでもらいたいのですが、女性の活躍を推進する意味からも男性上司にも読んでほしいと思います。昇進の話をためらったり、新しいことに尻込みしたりしてしまう女性部下がいたとき、本書が一助となれば幸いです。
54年、大阪府生まれ。早稲田大学商学部卒業後、三井物産に23年間勤務。その間、ロサンゼルス、ニューヨークで通算10年間の海外勤務を経験。00年、ホリプロ取締役執行役員。07年、(株)リンクステーション代表取締役副社長を経て、現在は一般社団法人彩志義塾代表理事、情報技術開発株式会社社外取締役、企業風土改革コンサルタント。
ビジネス書の執筆、講演、研修活動を行い、「世田谷ビジネス塾」「女性社員のための立志塾」を主宰する。
著書に『他社から引き抜かれる社員になれ』(ファーストプレス)、『できる人はすぐ決める!』(大和書房)、『コーチング以前の上司の常識 「教え方」の教科書』(すばる舎)、『女性を活用できる上司になれ』『仕事を楽しめる人は「忙しい」と言わない』(ともに扶桑社)、『あたりまえだけどなかなかできない51歳からのルール』(明日香出版社)、『バカ上司の取扱説明書』(SB新書)など多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授