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» 2020年01月29日 07時02分 公開

ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート:スタートアップだけが花形産業じゃない!――レガシー産業が起こすイノベーションの奇跡 (2/2)

[山下竜大,ITmedia]
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 AIカメラ分野のベンチャーには、カメラやAIの技術に関しては強みがあるが、いきなり数万箇所にカメラを取り付けることはできない。クレストは、既存のビジネスがあるため看板やウインドウディスプレイ工事と同時にAIカメラを取り付けることが可能であるため、この2つの事業間シナジーには非常に期待が持てる。

 永井氏は、「AIカメラのデータ分析ベンチャーになりたいのではなく、レガシー産業でイノベーションを起こしたいだけです」と話している。

グループ2社でも大きな成果を上げたLMI

 LMIは、ガーデニング事業のインナチュラルでも取り組んでいる。インナチュラルはもともとは植物のみを販売する小売事業会社であったが営業権を取得し、クレスト(後のクレストホールディングス)のグループ会社とした。永井氏は、「ビジネスモデルの変革による再生の余地が十分にありました」と話す。

 そこで、利益が期待できない店舗は閉鎖し、植物販売にファッションをプラスして、ライフスタイル販売にイノベーションさせる努力をした。営業権取得当時の、1店舗あたりの売上は1.5倍以上になり、また売上高の中のアパレルが占める割合が50%ほどとなり、インナチュラルはライフスタイルブランドへと変革を遂げた。現在ではさらに店舗を増やし、ガーデンデザイン事業にも参入している。

 インナチュラルでは切り花は扱わずに、地植え、鉢植えの植物しか販売しておらず、それを購入する顧客は庭を持っていることが多いと判断したことがガーデンデザイン事業(個人邸のお庭の造園事業)に参入した理由だ。一般的なガーデンデザイン会社は、地道に営業をするしかありませんが、インナチュラルのリアル店舗に来店するお客さまは、お庭を保有している住宅に居住している可能性が高い。リアル店舗を「お庭を持つ人たちのリードのソーシング元」と定義して、植物を購入したお客さまに一部無料で庭のデザインなどを提案しニーズを把握、そのままお庭の施工や定期メンテナンスを提案することにつなげた。

 「取り組みの1つとして、庭の図面を持ってきてくれたお客さまに、無料で庭のデザインをする“無料のお庭相談会”を実施しています。まさに、LMIの取り組みの1つである“ついで”ビジネスです。こうした取り組みにより、売上も数億円に拡大しています」(永井氏)

 2019年9月に買収したばかりの木材販売事業の東集では、現在KPI経営を強化し、ERPの導入、またロジスティクス面ではスマートドライブ社のデバイスを投入するなどして、さまざまな確度からデジタル化による変革を推進している。東集では、さまざまな種類の住宅向け木材を仕入れて販売している。

 「買収時の粗利率は3カ月で大きく向上しています。また今後は在庫管理から受発注までを一元管理するERPに投資し、より効率的な営業活動の実現を目指しています。ERPが整ったら、データの取得と分析により注力をし、イノベーションの種を探して育てます」(永井氏)。

テクノロジーを学ぶことがLMIの実現では不可欠

 昨今では、スタートアップがイノベーションの花形産業とされており、日本でも若手の起業家がSNSなどでサクセスストーリーを語っている。「本当にスタートアップだけがかっこいいのかを考えたとき、自分自身のキャリアを通じて、それだけではないと確信しています。例えば、既存のタクシー会社がUberになれなかったのか、書店がAmazon.comになれなかったのかということです。レガシー産業からこうしたイノベーションが生まれてもいいと考えています」(永井氏)。

 現在は、あらゆる市場が、デジタルの渦に吸い込まれていくデジタルボルテックス(デジタルの渦)の時代と呼ばれている。デジタルの渦に、最初に吸い込まれたのがテクノロジーである。例えば、電卓やカメラ、電話などの機能がスマートフォンに吸収された。次にメディアやエンターテインメントが吸い込まれ、紙の新聞や雑誌を読んでいる人はどんどん減り、映画も映画館よりネットで見る方が多くなっている。小売りもデジタルに吸い込まれ、EC比率が高まり、リアル店舗では物が売れなくなっている。

 このようなデジタルの時代に、レガシー産業はどのように戦っていけばいいのだろうか。デジタルボルテックスの時代においても、全てのレガシー企業が、新興産業にディスラプションされるわけではない。レガシー産業がデジタルボルテックスを理解して、市場に対して自ら変化を与えてもいいのではないだろうか。そこで、重要になるのがLMIの取り組みなのだ。

 永井氏は、「レガシー産業を生かしながらイノベーションを実現するためには、まずはテクノロジーを学ぶことが必要です。テクノロジーを知らないと、イノベーションの源泉を見落とすことになるためです。そのためには、ガートナーが公開しているテクノロジーのハイプサイクルが参考になるでしょう。自分たちの既存のビジネスが、今後何年で消えてしまいそうかを知ることも重要です。その間に、レガシー産業を生かしたイノベーションを考えることが求められます」と話し、講演を締めくくった。

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