この傾向をもたらしているのは、新型コロナウイルス感染症のまん延によるライフスタイルの強制的な変化が直接的な理由だと考えられる。ただ、情報の流通量や入手接点の拡大、職業の流動性の増加など、価値観を多様化させる流れはコロナ以前からも押し寄せてきており、むしろコロナによって加速したと捉えるのが正しい。
従って、認知度を向上させることに投資をしてきた大手企業にとっては、今改めて自社ブランドイメージの再認識や方向転換が求められている。
では、自社ブランドの現在地は、具体的にどのように測定すれば良いのか。一般的には大規模な消費者調査(アンケート調査)による把握だろう。前述の認知度や好感度の調査は極めてシンプルといえる。認知度は読んで字のごとく、そのブランドを知っているか否かを確認すれば良く、好感度も最小限に把握するのであれば直接的な問いを設定するのも良い。
より継続的に管理していくことを考えるのであれば、NPS(ネット・プロモーター・スコア)のような指標を取得するのも有効だ。一方で、課題となるのはブランドイメージだ。ブランドは価値の全体像であるがゆえに、人間の消費行動における価値観や欲求、願望を洗い出し、その相対的な強度を効果的に把握する必要がある。
ローランド・ベルガーでは長年、消費者価値について心理学的評価も含めた研究を行ってきており、消費者には「普遍的な消費に対する価値観」が19種あると結論付けている。
手前みそにはなるが、弊社ではこの結果をもとに個人の消費に対する価値観と企業のブランドイメージを同じフレームワークで分析できるツールを有している。これにより精緻なブランドイメージの把握、各業界における消費者セグメントの可視化、狙うべきターゲットと訴求すべき価値観の見極めが可能である。
先述した通り、かつて日本の消費者の大部分を形成したフォロワー層が消失したことにより、知名度を高めるというブランド戦略が多くの企業にとって効果的ではなくなりつつある。自社ブランドの現在地の把握や見直しのきっかけに、本稿や弊社が一助となれれば幸いである。
速水亘(Wataru Hayami)
ローランド・ベルガー シニアプロジェクトマネージャー / 東京オフィス
大阪大学国際公共政策研究科修了。消費財、小売り、エンターテインメントを中心とした領域において、さまざまな戦略プロジェクトを手掛ける。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授