第2回:働く幸せと、経済的合理性は両立し得る(2/2 ページ)

» 2023年02月21日 07時06分 公開
[清水康一朗ITmedia]
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 そして、そうすることこそが、結果的にお客さまとの永い絆を生み出し、リピートによる売上の安定、集客コストの軽減、採用コストの軽減などの経済業理性につながるのです。だから、経営者は、社員を決して見捨てないでください! すると社員は、会社をありがたい場所と感じ、会社に貢献してくれるでしょう。そんな「働く幸せを実感する」社員を増やすことで、絆を醸成していくだけではなく、生産性が高く、利益率も高い新しい経営の形が「絆徳経営」なのです。

100年先も愛される絆徳企業を目指せ!

 事業の持続化には、SDGsが必須の時代ですが、同時に必要なのは、「人事制度の交通整理」です。従来の人事制度では、対立構造が見られました。上司VS部下、先輩VS後輩などなど。そこで私が推奨しているのは、「社員にとって嫌なことは、極力取り除く」ことです。

 例えば、従業員が「長時間労働が嫌だ」と考えるならば、時短勤務を選べる社内システムを作るべきです。その場合、労働条件が変わるので給与が下がることに納得したうえで、長時間労働を排除した時短勤務を選択する社員と、それを真剣に考えてくれた会社との間で、交通整理がなされたわけです。

 このように、会社が「約束ごと」を明確に決めて、社員が選ぶ仕組みにする。その結果、対立構造は解決していくでしょう。

組織づくりは、「居場所と絆」の構築化

 弊社では、社員をパフォーマンス(成果)とコアバリュー(価値観)の2つの軸で評価しています。成果が優れていても、価値観やマインドセットに難点があれば、給料は伸びません。

 悩む社員に対して、そこで上司の登場です。上司は、部下の評価が両軸から高まるようにサポートします。すると、部下は上司を煙たい存在ではなく、「自分の昇給や昇進をサポートしてくれる存在」になるわけです。

 同時に、スキル研修と理念研修の機会を設けて、社員の給料を上げる機会を平等に提供します。つまり、社員に努力してほしい方向性を、目に見える形で明確化することで、確固たる価値観に基づく組織づくりへとつなげていけるのです。

 このように弊社では、上司が部下を育てる仕組みを何より重視しています。上司は部下を育てることで、自らも理解を深め、部下とともに成長していくことができます。その結果、社員は全員が役割を持ち「自分は、会社にとって必要とされている存在だと実感できる仕組み」が構築されるのです。

 「居場所と絆」こそ、私が提言している「絆徳経営」の体現化です。この「絆徳経営」によって、それまで異なるレイヤーで考えられていた、経済的合理性と企業哲学が両立し得るのが最大の利点なのです。

著者プロフィール:清水康一朗 (シミズ コウイチロウ)

ラーニングエッジ株式会社代表取締役社長。「セミナーズ」の創始者。「社長の教養」主宰。「精神的にも経済的にも豊かな日本に向けて貢献したい」という思いから、業界最大級のポータルサイト「セミナーズ」を立ち上げ、経営教育の流通に尽力。これまでに、誰もが知る大企業から中小企業まで4万社以上の経営を支援した圧倒的な実績を誇る。

ギリシャ哲学、インド哲学、東洋思想などを探求し、西洋と東洋を融合した和魂洋才の経営哲学を確立。鮎川義介氏などの日本的経営の研究のみならず、アンソニーロビンズ日本事務局長、ブライアントレーシージャパン株式会社の代表取締役会長、ジェイエイブラハムジャパン株式会社の代表取締役会長、ドラッカー学会推進員などを歴任。

絆徳経営、「円形欲求モデル」「マーケティングαとβ」「タイムリバーサル」「W-PDCA」など数多くの経営理論を提唱し、日本人の経済教育、歴史教育、道徳教育をライフワークとして力を注いでいる。

世界トップクラスの外国人講師を招いたビジネスセミナーでは日本最大規模のイベントを行っている。


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