既に触れたが、「こんなところでミスして評価を下げたくない」というのが大企業で働く人の本音だろう。良い言い方をすれば「餅は餅屋」に任せよう、ということなのかもしれないが、それでは、自分たちは専門家ではないのか、と言いたくなる。
会社が儲かっていれば、間接部門は普通にやっているだけで評価は上がる。何も難しい局面であえてギャンブルをする必要などない。手堅い目標値を設定せればよいのだ。これが終身雇用の真面目な姿というものなのだろうか? 危ない橋は自分では渡らない、これが王道になってしまっている。
すると「企業が儲かれば、大規模個別最適システムが増える」というおかしな現象が起きる。ビジネススピードが速くなり、企業内では対応が難しくなっているからだとも言える。
私は終身雇用は日本人の気質に合っていると思う。日本人のモノづくりに対するこだわり、地道な改善活動、現場での課題解決、ボトムアップで生産性を上げる、コストを削減する――これは、終身雇用によって会社生活が保障されているからこそ取り組めることだ。
終身効用は、日本の製造業の強さの根源とも言える。「滅私奉公」が強さの源なのかもしれないが、強く巨大な海外企業と戦うためにはスピードが必要だ。短期間で成果を出すための「成果主義」と日本の製造業の強さを引き出す「終身雇用」の両立が、日本企業が勝ち続けるための課題だろう。
IT部門にとって終身雇用と成果主義の両立はあり得ることなのだろうか?
次回は、IT部門が抱える問題として、個別最適システムが増える理由をもっと掘り下げてみたい。
ウイングアーク テクノロジーズ株式会社 協創企画推進室 岡 政次(おか まさじ)
三重県出身1959年生まれ。1977年シャープ株式会社に入社。本社IT部門に在籍、10年強の新人教育、標準化・共通システム化を担当。さらにシステム企画担当として、ホスト撤廃プロジェクト、マスター統合、帳票出力基盤の構築等に携わる。2007年4月、ウイングアーク テクノロジーズ株式会社に入社。現在、経営・エンドユーザ・IT部門の「三方一両“得”」になるIT基盤構想を提唱し、「出力HUB化構想」を推進する。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授