【第2回】世にもおかしな日本のIT組織(2)〜匠なき後の悲しき末路三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(1/2 ページ)

勝ち組企業ほど、情報システムは個別最適されていく悪循環がある。そしてIT部門は日夜、組織変更によるシステム変更に追われる。これを断ち切らなければ、ITは致命傷になりかねない。

» 2007年11月28日 10時00分 公開
[岡政次,ITmedia]

 IT部門のスタッフといえば、システムの変更ばかりに追われているが現在の姿だ。企業というのは、儲からない時も儲かっている時も組織変更が大好きなものだ。儲からない時は、赤字事業の縮小、集約、間接部門の削減。儲かっている時は、ポストを作るために組織の分割と、1つだった組織を次々と複数に分けていく。

 昔のホストコンピュータ全盛の時代も組織変更が少なかったわけではない。しかし、すべてのシステムが1つのホストの中で稼働するシンプルな構成だったため、変更が必要な個所も明確だったし、団塊の世代の匠(たくみ)の技で簡単に対処できた。だから、IT部門は突然の組織変更でも右往左往することなく、ユーザーもそれが原因でシステムが使えなくなることはなかった。

 現在はどうだろうか。組織が変わってもすぐにシステム変更はできない。ホスト全盛のころはシステムのすべてを掌握している匠がいたから事なきを得ていたが、現在は、ERPシステム、クライアント/サーバシステム、Webシステム、ホストシステムがクモの巣のように接続されている。特にオープン系は、外部に委託して構築してきた経緯があり、何がどのようにつながっているのか、全体を見通せる人が社内にいないのが現実だ。

「早く」「安く」が生んだ悪循環

 私は、むしろ必然的にこのようになったのだと考えている。私が在籍した会社だけでなく、多くの企業が同じようなシステムの肥大化、大規模個別最適システムの乱立、誰にもひも解けないクモの巣インタフェースに苦しんでいるからだ。バブルがはじけてからの急激な景気回復の流れの中で「個別の案件をいかに早く安く実現するか」、これを追いかけてきた結果が今のシステムの姿だ。全体最適と言いながら、実は個別最適なのだ。サーバーを買うと、運用管理ツールのJP1とシステム連携ツールのHULFTが付いてくる、とこんな状態だ。

 既に企業内の業務は、人海戦術で対応するには限界を超えた。だからこそ、IT部門は過去にないぐらいトップから期待されている。しかし、前回説明したように「事なかれ主義」での仕事に慣れてしまったIT部門には、もはや自分たちでその期待に応える力がない。だから、ITの現場は自分たちでシステムインテグレーターを雇って、さらに個別にシステムを構築し、自らのスキルを落としていくという悪循環を突き進む。

 どこかで誰かが止めなければ、企業内システムは崩壊するのではと心配だ。企業が勝ち続ければ続けるほど、個別最適システムが乱立する。この悪循環から抜けださなければ、ITは足かせどころか、致命傷になりかねない。IT部門は大企業病にかかっている場合ではないのだ。

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