少子高齢化が進むことで、日本企業では若くて優秀な人材の確保がますます困難になってくる。一方で「3年3割」という言葉が象徴するように若手社員の離職率は高い。今いる社員の流出をいかに防ぐかが企業にとって重要な鍵となる。
金融危機の影響で内定を取り消したり、採用を絞るという動きが出ている。しかし、少子化などの影響で社会人になる若者はどんどん減っていく。景気の底が見えさえすれば、若くて有望な人材を採用しづらくなる時代が再びやってくる。
欲しい人材を確保できないという「採用氷河期」には、企業が大量採用する一方で、若い社員の流出も相次いだ。社員の退職を防ぐこと(リテンション)は、会社の採用力向上、生産性向上にもつながる大事なテーマである。若い社員が流出した企業は、今からでも会社と管理職が一体となってリテンション戦略を実行すべきである。就職氷河期になるからといって手のひらを返すようでは、社員の心は一層離れていく。
今の若年世代は、退職要因に過敏に反応する。会社に対する見切りも早い。だからこそ、若い社員が辞める会社と辞めない会社のパターンを整理しておく必要がある。若い社員が辞めるのは「今の若年世代にマッチした魅力が会社にないから」だと自覚し、「今の若いやつは我慢が足りない」で済ませないことだ。
報酬面については、報酬水準の目標を持つ、世代間の損得を解消する、公平性を担保するための施策を優先すべきである。転勤を嫌がる若者が多いため、転勤者への住宅面のサポートも欠かせない。
非報酬面については、マズローの欲求5段階説と関連付けると体系的になる。例えば、生理的欲求や安全欲求にかかわる「振休や代休の権利をうやむやにしない」、「ムダな会議で社員を疲弊させない」、承認欲求にかかわる「主任という役職を有効活用する」、自己実現欲求にかかわる「育成のためには目前の果実を捨てる勇気を持つ」といったことがポイントになる。
昨今、今の若者は昔とは何かが違うという指摘がある。本書では若年世代を35歳くらいまでと考え、生まれ育った環境を社会、教育、経済、会社という切り口で考察するほか、彼らの長所および短所を整理している。例えば長所は、秀才タイプが多い、一見反応が良い、短所としては、指示がないと動かない、所属組織に軸足を置かないなどである。
時代背景が今の若年世代の長所、短所にどのように影響しているのか? 今の若年世代に合ったリテンション戦略とは何か? 本書にはこれらの疑問に対する分かりやすい回答が用意されている。リテンションというテーマを通じて組織のあり方を考える、あるいは管理職の行動変革を促すためのヒントも豊富だ。自分自身の若いころを思い出しながら、部下の離職を防ぎ、モチベーションを上げたいと思う管理職には必読の書である。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授