危機が発生したら、現状分析を素早く分析するとともに、ステークホルダーが誰かをいち早く探す。ステークホルダーとは、関わる人、現場を分かっている人、そして、実行するために、人、モノ、金を集めてこられる人である。
ステークホルダーを決めたら、本社がやるべきこと現場でできることは明確に区別する。現場のことは現場の人間が一番よく分かっており、彼らに任せることが一番である。そこに介入しようとすると、変なひずみが生まれる。現場のことは現場に任せることである。
それでは本社は何をすべきだろうか。現場が動きやすいような環境を整えるとともに、現場で起きていることを社内、社外に伝えるハブの役目を果たすのである。危機の際には現場では状況が刻一刻と変化する。それをできるだけつぶさにあらゆるステークホルダーに伝えていく。
答えは現場にしかない。現場を大事にしなければ、それらの情報も入ってこないはずである。先日福島第一原子力発電所の吉田昌朗所長が、海水注入中断の要請が来たものの、自分の判断で中断をしなかったことが明るみになった。今になってその事実が明るみに出ることは問題ではあるが、現場を一番よく知る人間が、自分で判断してやったことは称賛されるべきではないかと私自身は考えている。
「社会にとって重要なことは何か」が判断基準の一つになるだろう。そのような意識を持って現場の責任者が判断したのであれば、それは評価しなければならない。
翻って、日本の政治を見ると、菅直人首相の不信任決議案の採決の問題で政局が迷走し、いまだに迷走している。この国の将来を考えるリーダーたちが何をしているのか、「恥ずかしい」という言葉しか浮かばない。国家を揺るがすような事態の中で、実行するための法律なども迅速に決定していかなければならないのに、自分たちのことしか考えていない、自分の保身しか考えていないと言わざるを得ない。まさに「思考の枠」にとらわれたままである。
真のリーダーが出てきてほしいと心から願っている。
今回は未曾有の危機に直面したリーダーがすべきこととして、「思考の枠」に焦点を当ててお話しした。次回はこれまでお話ししたことをまとめながら、リーダーに求められることについて総括したい。
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授