推進力を獲得するには、企業は次の3つの方法で価値を創造しなければなりません。
価値を創造する3つの方法
・価値獲得――「内部効率」を上げること。
・事業評価獲得――競合他社に勝ち、パートナーシップやアライアンスを確実に最大限活用することで市場シェアを増やすこと。
・価値創出――顧客を引き付ける新しい商品やサービスを生み出すこと。努力の全てを顧客に集中させること。
価値獲得と事業評価獲得は価値創出にかかっており、価値創出によって最大限の成長性を生み出すことができる。
多くの企業が価値獲得から抜け出せなくなり、再編、縮小、外部委託に悩み、品質管理プログラムに飲み込まれてしまいます。価値獲得だけに焦点を当てることは過ちです。そうではなく、幅広いアプローチを取り、次の条件を満たすよう試みることで戦略的推進力を生み出して下さい。
戦略的推進力を生む幅広いアプローチ
・消費者が求める魅力的な製品あるいはサービスを生み出す――そうすることで企業が成長し、推進力を育て促進することができるようになる。
・競争に勝てるスピードで成長する――競争相手に常に追いかけさせるようにする。
・優れた製品と強力な顧客との関係を活用しチャンスを生み出す――消費者が持たなければと思うような製品またはサービスを開発することに力を注ぐこと。この重要な目標を達成した企業は、マーケティングを効率的に行い、顧客を引き付ける力を補強することができる。また、「市場抵抗」に対する費用のかかる争いをする必要がなくなる。
再編やコスト削減を行うことで企業は付加的な価値を獲得することはできますが、成長はほとんど促されません。成長するにはアップル社がiPodで行ったように、新しい価値の源を顧客から引き出す必要があります。
成長するためには、「推進力のある設計」と「推進力のある実行」の2つの動力に基づいた推進力計画を立てて下さい。推進力のある設計は戦略に顧客を引き付ける力を与え、膨大なマーケティングを行わなくても顧客が欲しいと思える製品を作り出すことを意味します。このような非常に魅力的な製品は「パワーオファー」と呼ばれます。
また、推進力のある実行は顧客の抵抗に打ち勝ち、生き生きとした口コミを波及させる動きを市場に根付かせることを指します。推進力そのものは、まず「パワーオファーを設計」し、それを「実行する」ことで、顧客を引き付ける力と市場への動きを拡大する力が結び付くことによって発生します。
ただし、推進力を創り出すことができるのは、Wiiやプリウスのように、パワーオファーが本当に魅力的であった場合のみです。魅力の無いオファーは推進力を殺してしまいます。推進力のある設計には次の4つの要素が必要とされます。
設計に必要な4つの要素
1、「強力な洞察力」――顧客の購買意欲をかき立てるもの、顧客が求めるものそして重要視しているものを深く理解する努力をすること。この要素は、企業リーダーが野心的な製品開発目標を持っている事を前提とする。
2、「強力な価値」――機能やコストを超え、製品設計者は顧客の「夢」や「想像」など「最も深い所にある人を突き動かすもの」を探求しなければならない。
3、「大きな価値」――革新的な製品の推薦、あるいは支持的な公衆の意見や口コミなど、顧客が提供してくれる価値に注意を払うこと。
4、「パワーオファー(設計)」――顧客に気に入ってもらえる商品やサービスを設計すること。「パワー」とは、顧客を引き付け企業の成長を促進させる製品の力を指す。
推進力とは「プラス」のエネルギーによってもたらさせるものという解釈ができるように思えます。常に企業価値を創造し顧客に満足を与えることを最優先課題として取り組むことが求められます。効率化と称した再編やリストラは逆に推進力を退化させていく根本的な原因と考えられます。
推進力のある実行には次の4つの要素が必要とされます。
実行に必要な4つの要素
1、「パワーオファー(実行)」――新しいオファーを顧客が入手できるよう商品化すること。これは繰り返される作業である。製品の初期バージョンは大抵の場合、後のバージョンより劣る。そのため、企業は、継続的に製品を微調整および改善し、顧客の意見を活用して可能な限り優れた製品を作らなければならない。設計段階のパワーオファーと実行段階のそれには大きな差がある可能性があることに留意すること。
2、「極めて高い満足度」――優れた製品は顧客に溢れんばかりの満足感を与えることができる。
3、「強力な顧客維持」――高い満足度が出せれば、購入者を忠実な顧客に変えることができる。
4、「強力な顧客との関係」 ――満足度が極めて高ければ、顧客と強い結び付きを持つことができる。iPod の顧客は定期的にiPod の付属品を購入し、数多くの音楽をダウンロードしている。
上記の8つの要素は一緒になることで企業に推進力を生み出すことができます。これは特に、内部に依存するのではなく、外部に焦点を当てた時、可能となります。
推進力を高めるには、製品は新しく、旧製品より優れていなければなりません。また、小規模で敏捷性の高い企業の方が、大規模な企業よりも推進力を 生み出しやすい傾向にあります。しかし、大企業の規模や複雑さが妨げになる場合もありますが、巨大企業は確実に自立した推進力を獲得することができます。トヨタがその例です。
推進力構築のための設計と実行の8つのパターン! これらそれぞれが密接な関連性の中で作用することで、企業の推進力は維持されるということです。
著者紹介
J.C. ラレッシェは、INSEAD大学のアルフレッドH・ハイネケン教授を務めています。また、数多くの世界的フォーチュン500社のコンサルタントおよび戦略的開発コンサルタント会社の初代会長を務めています。
経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授