ビジネスにおいて「対話力」は非常に大きな意味を持つITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

» 2014年06月16日 08時00分 公開
[山下竜大,ITmedia]
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 短い時間の中で考え、応えていくためには「応答する力」が必要になる。対話のすべてに反応するのではなく、焦点を定めて反応することが重要。相手が何を求めているのかを直感的に理解して、リズミカルにツボを外さず応答する。そのため直感力を養うことも、応答する力では重要になる。

 「話す力」は、友好的に、真心を込めて、誠実に礼節をもって話すことが重要。基本的に対話は1対1の関係であることから、相手の世界や意識を理解することも必要。相手の反応を見て、相手の世界や意識にチューニングしながら話をする。また適切な言葉やタイミング、長さを意識して話すことが重要になる。

 最後に「振り返る力」であるが、思考が対話の中の非常に短い時間で行われるために、応答のための対応にベストを尽くすことになる。そのため対話中はなかなか相手の話を理解することが難しい。そこで対話による経験を、次に生かして行くためにも対話が終わった後で振り返ることが重要になる。

 「能の世阿弥の言葉である"離見の見(りけんのけん)"は、自分が演じている舞を客席から見ている観客の目で見るというものである。これは対話の達人であれば簡単かもしれないが、一般的にはそれほど簡単なことではない。相手の立場や上から俯瞰して自分を振り返る力が重要になる」(小林氏)

「対話力」を磨くために必要なこと

 対話に必要なのは、「相手と向かい合う」「相手に対する親愛の気持ち」「相手の人格を尊重する」「注意力・精神力」「美徳(仁、義、礼、智、信)」「時間」「気持ちの余裕」である。小林氏は、「対話と会話の違いを話してきたが、これまでは会話モード、これからは対話モードと、モードの違いを意識すればよい」と話す。

 世間話をしているときは会話モードで、対話モードに切り替えたら相手の話に意識を集中すればよい。このとき大事なところだけにフォーカスして、すべてに集中しないことが重要である。そのためにはトレーニングも必要。1対1や多人数での対話のトレーニングや、電車の中での振り返りなど、日常生活の中でできる範囲で行うことが重要になる。

 ソクラテス以来、対話の哲学は、対話や問答を通じて自分自身、議論を深めていき、真に近づいていく。完全な真実に近づくことは難しいので、私自身は「より深い考え方」と言っている。相手と自分にとって、何が一番よい解決法なのかについて、議論を通じて、より良い考え方に到達することが対話の目的である。

 小林氏は、「哲学の方法や考え方を実際の人生やビジネスに生かすために対話は重要になる。ソクラテスの問答法は、対話法、弁証法へと発展している。弁証法は、正(テーゼ)と反(アンチテーゼ)という対立した考え方から、より高い考え方である合(ジンテーゼ)に到達するというもの。これは対話を通じて考えが発展すること」と話している。

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