中土井 創業当時から、社員に目標を持ってもらい、その実現を応援するというスタンスで経営をしてきたのですか。
森下 以前は今のようなスタイルではありませんでした。会社が大きくなるにつれて、考えが変わり、会社で働く社員が幸せになることが会社の存在する意義のひとつであると考えるようになりました。会社が小さいときには、アフリカの難民に毛布を送ろうとか、ユニセフに寄付しようとは、なかなか思わないですよね。
会社のこと、自分のことで精いっぱいなので、アフリカの難民がどうなろうと関係がないと考えてしまいます。まずは、自分の家族を幸せにしなければなりません。その次に、自分の会社の社員が幸せなのかと考えるようになります。社員もそこそこ幸せになってきたら、自分たちだけが幸せなんて許されるのか、アフリカの難民に寄付しようかとなるんですよね。そういう順番なんです。経営が軌道に乗り欲求が満たされることで、自分だけではなく、社員の幸せ、世界全体の幸せの実現を助けたいと考えるようになりました。
できる能力があるのに、それを生かしきれずにいたり、力を出し尽くしていない社員を見ると、黙っていられないというおせっかいな性分も今のスタイルの形成に影響していると思います。本人が望む生き方を確認し、それぞれに会社という舞台を用意することで、できる限り社員を応援していたいんです。
中土井 森下さん自身が考える「人間としての価値ある生き方」を社員全員に提唱していますが、森下さんからは押し付けがましい感じが全くしません。社員が価値ある人生を送れるよう手助けしたいという純粋な気持ちがあるからだと感じました。
森下 とにかく、囚人のように生きるなんてもったいないじゃないかという思いが強いんです。目標を持ち、その達成を目指そうと、きれいごとだけをいっているつもりもありません。基本的にみんな凡人だから、目標に向かって頑張るといったって、達成できないことがほとんどです。
だめだと頭では分かっていても、サボってしまうことが誰にだってあります。欲に負けてしまうのが人間です。私だってよくあります。人間なんだから、そういう面があって当たり前。たまには、カッとしたり、怠けたりする人間らしい面があった方がいいんです。できなかったときは反省すればいい。そういう弱い部分があるからこそ、目標を持つ意味があります。
中土井 社員一人ひとりが自分の意志で自分の人生を作り上げる、そのためのステージが会社であり、後押しするのが社員の選択を尊重する人事制度なんですね。
森下 通常では100の力しか出ないところを120とか150にするのが組織マネジメントだと思います。それを実現するためには、社員それぞれが目標を明確に持ち、自分の意志で人生を作り上げていることが必要です。これからも、社員の価値ある生き方を応援し続ける会社でありたいです。
森下社長のお話しから「人間らしい」ということをとても大切にされていることが伝わってきました。どうしようもなく、だらしのないところがあるのも人間で、誰かに純粋に貢献したいと願えるのも人間。そのどちらであったとしても、自らが選択し、それに従って素直に生きられることが本当の自由なのではないか? そんな投げかけをいただいた感じがしました。
中土井 僚
オーセンティックワークス株式会社 代表取締役。
社団法人プレゼンシングインスティテュートコミュニティジャパン理事。書籍「U理論」の翻訳者であり、日本での第一人者でもある。「関係性から未来は生まれる」をテーマに、関係性危機を機会として集団内省を促し、組織の進化と事業転換を支援する事業を行っている。アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア株式会社)他2社を通じてビジネスプロセスリエンジニアリング、組織変革、人材開発領域におけるコンサルティング事業に携わり2005年に独立。約10年に渡り3000時間以上のパーソナル・ライフ・コーチ、ワークショップリーダーとしての活動を行うと共に、一部上場企業を中心にU理論をベースにしたエグゼクティブ・コーチング、組織変革実績を持つ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授