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» 2016年01月20日 08時00分 公開

個々が才能を発揮し「一隅」を照らし出す気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀(2/2 ページ)

[聞き手:中土井僚(オーセンティックワークス)、文:伊達直太,ITmedia]
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小方社長(左)と聞き手の中土井氏(右)

中土井 小方さんが起業を考えたのも、自分の才能に目を向けた結果ということですね。

小方 私が就職したバブル時代は、1人が7、8社から内定もらう売り手市場でした。仕事が選べたからこそ、自分に向いた職は何だろうと考えました。当たり前のことですが、人には違いがあります。もしかしたらそれを生かすことが人生で、違いを生かす仕事が天職なのではないかと考えました。いまもその考え方は変わりません。ですから、自分の才能について考えながら、いろんな職を試してみることが大切だと思います。

 また、会社もそれに合わせて変わっていく時代だと思います。個々の違いがあれば、ラクーンの社風と合わない人もいます。そこで重要なのは、合わないということをそのまま受け止めることでしょう。ラクーンが伝統的に、辞めていった人と仲がいいのも、そういう考え方が共通しているからかもしれません。彼らが新天地で活躍し、一隅を照らしていることをラクーン全体が喜んでいるわけです。

「幸せとはこういうもの」と言い切るリーダーにはなりたくない

中土井 自分の才能を発揮できる環境は、社員が仕事に取り組むモチベーションが上がりやすいですね。

小方 そう思います。世の中には「石の上に30年」という気持ちで、楽しいかどうかに係らず、同じ会社に勤め続けることが正しいと考える人がいます。給料を持って帰るのが役目だと思っている人もいます。しかし、それではなかなか生きがいは実感できないでしょう。世界には、違いを生かし、一隅を照らすことによって楽しく仕事をしている人がいます。そういう人が集まっている組織が理想です。

 また、ラクーンの現在は、みんなが作ってくれたものです。実は、最初の月の売上は、たった80万円でした。そういう環境のなかで、社員が「仕方ない。自分たちでよくしよう」と思ってくれたわけです。私は、そこにいただけです。それが分かっているし、感謝しているから、利益が出ても業績連動でみんなに分配します。会社のお金はみんなのお金です。大事に使いますし、どう使うかみんなで考えます。

中土井 今後、ラクーンをどのようにマネジメントしていきたいと考えていますか。

小方 大学3年のとき、アメリカに行ってアントレプレナーの話を聞く機会がありました。そのときの話で頭に残ったのが、これから日本が先進国になるにつれ、職種が多様化し、性格や適正を生かして働く時代に入っていくということです。教育が進み、文化が深まるほど、人は好奇心と向上心を持って働くようになります。後進国の工場のように、ずっと単純作業を続けることができなくなっていくわけです。

 リーダーとしては、それぞれが個性を生かして働ける会社を目指すことが大切と教えられました。あらためて思い返しても、まったくそのとおりだと思います。今後も、「醤油よりソースがいい」という人を否定したり、幸せの種類が1種だけと言い切るリーダーにはならないようにしたいと思っています。

中土井 採用や教育の根底にも、やはり「一隅を照らす」ことや、好奇心や向上心を満たすことがありますか。

小方 そうですね。社員が100人になったとき、手紙を書いたことがあります。テーマは、何のために働くか、みんなにとっての幸せは何かです。

規模拡大を目標にするなら、頑張って1000人に増やせるかもしれません。しかし、その結果として、社員みんなの幸せが10倍になるとは限りません。辛くて悲鳴をあげる人がいるかもしれません。早く仕事を終えてデートしたい人もいるでしょうし、早く帰って子どもと風呂に入りたい人もいます。才能が個々で違うように、求めている幸せも違うわけです。

 ですから、人を増やすにしても、何を担ってほしいかを考えて、慎重に採用します。採用したら、丹誠こめて教育します。そのようなメッセージを伝えたところ、社員たちは賛成してくれました。自分たちの考えや目標を理解してくれる人が自然と集まり、集まってくれた人を一生懸命育てる組織であり続けたいと考えています。

対談を終えて

小方さんが社会人になられた頃は、まだバブル華やかなりし頃で、学生が持つ就労観は画一的であってもおかしくはない時期だったのではないかと思います。そうした中で、「自分は本当に何をしたいのか」を深く考え、独立して会社を興すという人は皆無であったことでしょう。そうした中で、自分が手掛けるべき仕事を見つけ、社員にもそれが見つかるように一貫して経営の軸に据えられていることがラクーンの独自性を際立たせているように思います。世間一般的な用語で語られている「キャリア」という言葉の中に見落とされがちな本質がラクーンの組織マネジメントの中には息づいているように感じました

プロフィール

中土井 僚

オーセンティックワークス株式会社 代表取締役。

社団法人プレゼンシングインスティテュートコミュニティジャパン理事。書籍「U理論」の翻訳者であり、日本での第一人者でもある。「関係性から未来は生まれる」をテーマに、関係性危機を機会として集団内省を促し、組織の進化と事業転換を支援する事業を行っている。アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア株式会社)他2社を通じてビジネスプロセスリエンジニアリング、組織変革、人材開発領域におけるコンサルティング事業に携わり2005年に独立。約10年に渡り3000時間以上のパーソナル・ライフ・コーチ、ワークショップリーダーとしての活動を行うと共に、一部上場企業を中心にU理論をベースにしたエグゼクティブ・コーチング、組織変革実績を持つ。


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