例えば、トイレの掃除をしても、誰がしたかは分かりません。トイレを使う人が、トイレ掃除をしている人に「ありがとう」と言う場は、ないのです。
しんどい仕事をしたら給料がいいとは限りません。「ほめなくてもいいから、せめて感謝ぐらいはしてほしい」と言っていたら、人のために何かをするという行為はできなくなります。
現実は、人のためによかれと思ってしているのに怒られるのです。ボランティアは、ほとんどがそうなります。人助けをしているのに、助けている人から文句を言われます。ここで「うれしい派」の人はいなくなります。「人に喜ばれるのが好き。だから接客業が好き」と言う人は、ここで行き詰まって人間嫌いになるのです。
「うれしい派」の人は、「自分の仕事で、これだけやったという結果が出てくるのがうれしいです」と言います。
例えば、建設業で働いている人は「自分がかかわった仕事の建物が建つのがうれしいですね」と言うのです。この考え方は、「楽しい」ではなく、「うれしい」です。建物が建ったというのは、結果です。
実際の仕事においては、ボツもあるし、競合で負けることもあります。「いいね」と言われていた企画が、最後のところで逆転してボツになるのです。ボツになった仕事、負けた試合が楽しいかということです。
「○○ができると楽しい」というのは、結果が楽しいのです。それは「楽しい」ではなく、「うれしい」です。「結果」という見返りを求めているのです。
「楽しい派」のモノづくりの人間は、結果が形にならなくても気にしません。全部ボツでも楽しいのです。そういうことを考えること自体が楽しいからです。
「楽しい派」の人は、プレゼントを探している間が楽しいのです。「うれしい派」の人は、プレゼントをあげた相手が喜んでくれて、それでつき合うことになっては初めて「うれしい」と感じます。
女性にお寿司をごちそうしてエッチをしようとしている男性は、「うれしい派」です。そういう人は、お寿司を食べている間は楽しくありません。「できれば、お寿司は省略したい。なしで済んだらいいのに」と思っています。満足するのは、エッチができた瞬間だけです。
「楽しい派」の人は、お寿司を食べている時も、お寿司屋さんを選んでいる時も、なかなか予約がとれなくて四苦八苦している時も、エッチがなくてガッカリしている時も、「今度は何を食べに行こうかな」「何をしようかな」と考えている時も楽しんでいます。
ずっと楽しいのです。ここに満足感があります。「楽しい派」の満足は、永遠です。「うれしい派」の満足は、一瞬にすぎません。実は、一瞬ですらなく、ゼロ秒です。女性とエッチできたとしても、「これなら高いカウンターのお寿司でなくても、回転寿司でもいけたかな。ムダな投資をしたな」と思うからです。
結果は得られているにもかかわらず、「しくじった」「損した」という気持ちになるのです。断られたら、もちろん「損した」と思います。どちらに転んでも、満足度がないのです。そういう経験を何度も積み重ねていると、「またそうなるのではないか」というネガティブな予測しかできなくなります。
結果、AかBかを選ぶこともできなくなるのです。結果より、目標を目指すことで、迷わなくなるのです。
作家
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は、『迷わない人は、うまくいく。』(学研プラス)など、1,000冊を超す。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授