5キードライバ(5つの領域)とは、変化を予測する(Anticipate Change)、信頼性を高める(Generate Confidence)、行動を起こす(Initiate Action)、思考を開放する(Liberate thinking)、結果を評価する(Evaluate Result)の5つ。頭文字をあわせて「AGILE」となる。
以下に、各領域での3つのファクターをまとめた。
(1)明確なビジョンと方向性を示し、組織全体に浸透させる
(2)ビジネス環境の変化を察知し、変化に対応する戦略を立案する
(3)内外部の顧客のトレンドや競合他社の変化に対応する
(1)メンバーがチームの一員としての連帯感を持って仕事に取り組める肯定的な環境を作る
(2)階層や部門を越えて、オープンで正直なコミュニケーションが取れるようにする
(3)メンバーの能力向上を支援し、モチベーションを高める工夫をする
(1)組織全体を通じて行動することを重んじ、スピードが高く評価される環境を作る
(2)メンバーが自分で意思決定できるように判断の基準を示したり、適切な権限委譲をしたりする
(3)必要に応じて、メンバーや他部門の協力が、速やかに得られる仕組みや関係を作る
(1)創造性と革新性を評価し、改善のためのアイデアを自由に出せる環境を作る
(2)顧客やサプライヤー、従業員の意見、提言、苦言をビジネスに積極的に取り入れる
(3)よいアイデアは職域を越えて組織全体に反映できるようにする
(1)メンバーに対し業務に関する期待を明確に伝える
(2)仕事の成果ややり方に対するフィードバックを効果的に行う
(3)チームやメンバーの成果に対する適切な評価基準を持ち、評価の結果を改善、向上のために活用する
上田氏は「俊敏性と弾力性を高めるためには、AGILEな組織であることが必要になる」と言う。さらに組織がAGILEであるためには、(1)ピープル、(2)テクノロジー、(3)プロセスという3つのファクターが重要になる。この3つのファクターが、バランスよく配置されていなければ、AGILEな組織を作ることはできない。
「これまでの時代は、可能性として“ほぼ間違いなく起こる”あるいは“起こりうる”という高確率で、影響度の大きい分野だけに注目しておけばよかった。VUCAの時代は、可能性として“めったに起きない”が、もし起きると影響度が大きい分野も想定しておかなければならない」(上田氏)
これまでのリーダーは、先頭でメンバーを引っ張ることが求められた。VUCA時代のリーダーは、もしリーダーに問題が発生した場合でも、別のメンバーが率先してリーダーシップを発揮できる有機的な組織を構築する能力が必要になる。
「想定外を想定すること。確率の時代から、不確実性の時代に変化したことを意識しなければならない。この10年、ビジネス環境で予測していなかった出来事も起きている。確率の低いものについてもビジネスストーリーを描いておく。VUCA時代のビジネスでは、有望だった製品やサービスでも、すぐに陳腐化してしまう。また、グローバル環境が複雑な関係性で、思いもよらぬ影響を受けることもある」(上田氏)
さらに、新たなる市場創造や参入者も登場している。不測の事態は起きるものと考え、常に複数のシナリオを描いておくことが必要になる。そのためには、クリティカルシンキングにより、本質を捉える思考法がないと見誤ってしまう。また、複数のビジネスストーリーを描く力も必要だ。さらに、柔軟な対応力のある組織作りが必要になる。リーダーのスキル以前に、リーダーが持つべき能力として重要になる。
ビジネスストーリーとは、未来のシナリオに対するビジネスの方向性を示したもの。シナリオとは、不確実性の環境の中で起こりうる筋書きである。ビジネスストーリーを描くステップは、以下の通りである。
(1)テーマを決める
(2)環境要因(ファクター)を決める
(3)情報収集をする
(4)情報を分析しドライビングフォースを見つける
(5)キードライビングフォースを見つける
(6)複数のシナリオを描く
(7)ビジネスストーリーを描く
上田氏は、「VUCA時代のリーダーに求められる役割に正解はないが、世の中の動きに対してアンテナを張っておくことが重要になる。これまでであれば、自社の業界に関係ないと思っていたことでも、考えておくことが必要だ。もし何か起きたときに、どのように関係するかを描いておく力をつけておく。また、リーダーは、それに対応できる組織作りをしておくことも必要になる」と締めくくった。
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明治学院大学 経済学部准教授