また、拙速は評価にもつながります。自分の動きにスピードを持たせるだけでいいのですから難しいことではありません。一般的な上司は「完璧にやってくれる部下」ではなく「速く動く部下」を求めています。失敗したとしてもすぐに指示が出せるからです。
メールの返信が速い人は取引先などからも信頼が高くなっていきます。アポイントの調整を速く進められる人は、とても好印象です。世の中には残念ながらこういった動きが遅い人が多いようですが、その状況は逆にいえばチャンスです。動きのスピードを上げるだけで周囲の目にとまり、信頼と好感を得ることができるわけですから。スピードは、他者や他社との戦いに勝つ最高の武器だといえるでしょう。
拙速のメリットはまだあります。速く動くということは、前のめりになりますので負荷が掛かります。例えば、情報共有を先にしたり、方向性を最初に決めたり、面倒なことを先にやったりと作業的にも心理的にも負担があることを先に進めることになります。
コンサルティング業界ではこういった動きを「フロントローディング」と呼ぶそうですが、このように前のめりになって速く動くことで、それぞれのタスクに対して「締め切り効果」も表れますし、心地よい緊張感も生まれます。その緊張感がまた、自らの成長にもつながっていくのです。
ちなみに、「拙速」という字は「速い」を使いますが、「はやい」には速いと早いという漢字があります。これは、よく間違えられますが微妙に意味が違うものです。
速いは、ある動作を完了するのに要する時間が短いことを指します。つまり、1つの仕事がとてもスピーディーであること。早いは、ある基準より時間、時期が前である、始まってからあまり時間がたっていないという意味で使われます。「速い電車」といえばスピードが速い電車をイメージし、「早い電車」は始発電車のような朝早い時間帯の電車をイメージするかと思います。
このように速さと早さは違うわけですが、「拙速」という字を書きつつも行動としては両方の「はやさ」を持つべきだと考えます。つまり、「人よりも先に動くこと(早さ)」と「スピーディーに仕事を進めていくこと(速さ)」のどちらも意識する必要があります。
状況が変わることや、誰かからの指示を待っていてはいけません。成功の秘訣は、とにかく「はやく動く」ということなのです。
プラスドライブ代表取締役
1996年、神奈川トヨタ自動車株式会社に現場メカニックとして入社。5000台もの自動車修理に携わりながら、トヨタの現場独自のカイゼン手法やPDCAサイクルをたたき込まれる。トヨタ独自の“やりきる力”を身に付けて発揮した結果、技術力を競う「技能オリンピック」で最年少優勝に輝く。さらにカイゼンのアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」でも2年連続全国大会出場を果たすなど活躍。
活躍の場をIT業界に変えても、PCサポートを担当したデルコンピュータでは「5年連続顧客満足度NO.1」に貢献。現在はWebマーケティング会社を設立し、クライアント先の現場にてWebカイゼンやPDCA施策の推進を図りながら“やりきる力”を発揮している。
著書に、『トヨタで学んだ自分を変えるすごい時短術』(かんき出版)『新人OLひなたと学ぶどんな会社でも評価されるトヨタのPDCA』(あさ出版)『どんな仕事でも必ず成果が出せるトヨタの自分で考える力』(ダイヤモンド)などがある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授