判断停止を脱し、「成長パターン」に変わろう!ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2018年04月05日 07時17分 公開
[永井孝尚ITmedia]
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 事例として、長野県阿智村の取り組みを挙げています。長野県南部にある人口6600人の村です。2011年まで廃れた温泉郷で、村に20軒ある温泉旅館同士は値下げ競争と、低稼働率に悩んでいました。そこで少数の若手が中心になり「日本一の星空ナイトツアー」を始め、2016年には11万人もの観光客を集めました。旅館も値下げせずに稼働率が大きく上がり、村全体が活気づいています。

  • 第1段階:まず「危機感」を持つことです。「あるべき姿」を考え、「現状」とのギャップを把握し、「解決すべき問題」=「コレやりたい!」を決めます。

 阿智村で、ある温泉旅館の企画課長だった松下仁さんは、「このまま縮小が続いたら、子どもたちに阿智村を渡せなくなる」という危機感を持っていました。「あるべき姿」は「将来も繁栄する阿智村」でしたが、「現状」は「衰退の一途」、そこで「解決すべき課題」は「阿智村の地域づくり」だったのです。

  • 第2段階:「解決すべき問題」を決めたら、同じ問題意識を持つ仲間とプロジェクトチームを作ることです。

 危機感を持った松下さんは解決策を探し始めました。あるセミナーで出会ったのが、JTB中部の武田道仁さんでした。武田さんは観光視点で地域づくりをするのが仕事で、中部でセミナーを行っていました。2人は意気投合し、「阿智村の地域づくりをしよう」と話し合いを開始。「阿智村にあるスキー場のスタッフが、夏場にゴンドラで山頂に登って星空を見ているらしい」ということが分かり、実際に出掛けてみると美しい星空で、しかも環境省が「日本一の星空」として認定していたことも分かりました。そしてスキー場の社長、温泉郷のご意見番的な旅館の社長など、信頼できる仲間も加わり、「日本一の星空ナイトツアー」への挑戦が始まりました。

  • 第3段階:少人数チームで仮説検証を回し続けていきます。仮説検証の本質は「失敗からの学び」。80点主義で大まかな仮説を作ったら、即実行、即検証、即対応。この繰り返しで、事実からの学びを積み重ね、スピーディーに成長します。

 阿智村の松下さんたちは、本当にお客さんが満天の星で感動するかを確かめるために、早い段階で小学生を招いてパイロットツアーを行いました。また、星の物語を話す「スターガイド」を採用、育成してパイロットツアーで挑戦させたり、取り組みを公式なものにするために観光関係者を招いて協議会を開催したり、早い段階で正式にツアーを開始しました。

 多くの失敗がありました。協議会の参加者はたった3人。初日の来場客もたった3人。しかし星を見たお客さんは心から感動していました。そして素早い仮説検証を愚直に繰り返し、わずか5年で11万人が集まるまでに育ちました。

 本書では他にもさまざまな企業や個人の取り組み、実際に成果を挙げるための勘所を紹介しています。

トルネード式仮説検証で、個人も企業も変わり、日本も変わる

 私は自分の仕事でトルネード式仮説検証を実践し、さらに企業のお客さまの現場でもチームの一員として参加し実践してきました。そして単に仕事のスピードが速くなるだけではなく、参加者が自ら進んで課題に挑戦するようになり、仕事も楽しくなり、ビジネスでの成果も挙がることを実感してきました。

 本来、仕事とは、無味乾燥なものではありません。

 本来、仕事とは、仲間とともに「コレやりたい!」という思いを共有し、その実現を通じてお客さまを幸せにし、自分自身も感動するものなのです。

 日本を「成長パターン」に変えるのは、現場でお客さまの課題と向き合う全てのビジネスパーソンです。あなたが仕事で「コレやりたい!」を目指して挑戦するようになれば、組織も徐々に変わっていきます。そして日本も変わっていくのです。

著者プロフィール:永井 孝尚(ながい たかひさ)

マーケティング戦略コンサルタント。1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMに入社。マーケティング戦略のプロとして、事業戦略策定と実施を担当。さらに人材育成責任者として人材育成戦略の策定と実施を通して、同社ソフトウェア事業の成長を支える。

2013年に同社を退社して独立。ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方で、講演や研修を通じて、マーケティング戦略の面白さを伝えて続けている。

主な著書に、シリーズ60万部の『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部の『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)、他多数。

ライフワークの写真では、都内著名ギャラリーで数多くの個展を開催する一方で、写真雑誌での連載も行っている。


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