東京の街の“ローカルエキスパート”が、仕事の合間に一息つけるスポットやイベントを紹介します。
かつて北西からの江戸の入り口とされた板橋の東京エールワークス(TOKYO ALEWORKS)を訪れる人は、よほどのビール好き、もしくはウイスキー好きに違いありません。近隣住まい、もしくは勤めているという条件を除けばですが。2018年に開業した東京エールワークス醸造所は、板橋産のクラフトを含めおよそ20種類のビールと、それに合わせた料理が楽しめる店としてにぎわいます。
それはそれで非常に魅力的ながら、「お江戸の入り口」、つまり江戸の外れに位置するため、都心から向かうにはなかなか骨が折れてしまいます。そう嘆いていたところ、JR有楽町駅から徒歩1分ほどの高架下に、東京エールワークス ステーション タップルーム エキュートエディション有楽町として2020年8月31日に新店舗がオープンしました。
そもそもエキュートエディション有楽町は、駅改良計画に伴い誕生した新名所。「Five Interactive Salon(五感をくすぐる五つの嗜好を集めたサロン)」とうたい、周辺に勤務するビジネスパーソンのための憩いの場を提供します。
ビックカメラ有楽町店から道路を挟んで位置する同店は、右側のダイニングスペースと左側のスタンディングバースペースに分かれており、少なくとも二通りの楽しみ方を備えています。
「エールワークス」の名の通り、左側のスタンディングスペースでは、この有楽町店のために開発された『TASTY IPA』を皮切りに16種類のドリンクを用意。壁際に設置された16のビールタップから注がれます。
タップの「1番」に配された『TASTY IPA』は、もちろん一番のおすすめです。「Tokyo Aleworks Station Taproom Yurakucho」の頭文字から命名されただけでなく、なんと有楽町駅の駅員まで、その開発に尽力した逸品です。
本店舗のみで提供されるオリジナルは、舌の先から奥までを駆使し味わうに不足はありません。芳醇(ほうじゅん)でフルーティーとまで形容できる香りが飛び込んでくるため、さぞかし軽い喉越しかと思いきや、底からぐぐっと大人の苦味がこみ上げ、ビールの醍醐味(だいごみ)を余すところなく与えてよこす実力派です。目移りは必至ですが、まずはスタンダードに据えるつもりで、最初の一杯としてほしいです。
ビジネスパーソンにとって帰路のみの楽しみか……と思いきや、なんと朝8時からオープン。ビールをオーダーすることももちろん可能ですが、本格的バリスタが届けるコーヒーたちもスタンバイしています。チェーンのコーヒー店で仕方なく手にしていた、それと異なり、しっかり肝の座った朝のコーヒーが一日の活力を提供してくれることでしょう。
よってタップから繰り出されるドリンクの中には、コーヒーの香りをたっぷりと感じるエールも用意。また15および16番はタリスカーとグレンモーレンジィのハイボールもあります。つまりのタップからは、IPAからコーヒーの香り、そしてウイスキーのハイボールまでフルコースを体験することもできる寸法です。
スタンディングとは別にオープンキッチンを備えたダイニングスペースが設けられているのにも理由があります。営業時間を絞り込む昨今の飲食店とは異なり、ブレックファーストからランチ、そしてディナーに至るまで、それはそれは気合いの入ったメニューが用意され、一日の食事に豊かなバリエーションを生み出しています。
筆者がテイスティングしたのはランチのハンバーガー。バンズにはビール醸造の際に出た廃麦を活用されています。バーガーにもビールの香りを思わせる仕上がりです。スタンダードサイズでも十分にボリューミーさゆえ「これじゃ、午後は睡魔に耐えられない」などと想像していたところ、メニューに『1ポンドパティチーズバーガー』を見つけました。このメガサイズで3,000円とは、食いしん坊には耐えられない誘惑ですね。
ディナーメニューにはピザも用意されます。重い品々ばかりではなく、ビーガンバージョンまで、現代の潮流をにらんだ品ぞろえもあり、なかなか小癪(こしゃく)です。今しばらくは東京都の自粛要請のため、夜の営業時間は控え気味ですが、このエールワークスがビール好きで日夜大にぎわいする図柄を、頭の中に描くのはいとも簡単でしょう。
チェーンでははない、気軽に堪能できるエールハウスが、東京のど真ん中についに産声を上げました。ビール好きにはたまらないニュースです。
その他、「駅員が開発に参加、東京エールワークスが有楽町にオープン」では、さらに詳しいを紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
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明治学院大学 経済学部准教授