“Operating Model Canvas”の著者Andrew Campbellらは、オペレーティンモデルを5つ(PLISM(Process, Locations, Information, Suppliers, Management System))に、通信機器メーカーEricssonは6つ(KPIs, Technology, Process, People Management, Organization, Partners&Alliances)に分解する。どれでも構わない。問題は、網羅感をもってオペレーティングモデルを構成できるかどうか、だ。
オペレーティングモデルは「一度作ったら終わり」ではない。事業環境に応じて進化させ続けなければならない。だが、言うは易し。とかく企業活動には慣性が働く。目先の「負」を回避すべく、従来のオペレーティングモデルを残存させてしまう。結果、企業変革は頓挫し、「20:マイナス20」のわなに陥る。これは、戦略立案の失敗ではない。オペレーティングモデル進化の失敗だ。
残念ながら多くの企業のオペレーティングモデルは、無秩序な成長の産物にすぎない。「両利きの経営」を言い訳にして、廃すべきオペレーティングモデルが堂々と延命させられる例も少なくない。経営資源の非効率な配分はROIC低下に直結、拠点過多や組織間の機能重複は顧客体験品質や利益率の悪化をもたらす。ステークホルダーは離反、短期利益を志向する投資家の格好の標的となり、事業譲渡や会社分割を迫られる危険すらある。それでも進化をためらう理由は、合理的な計画と経験豊富なPMO(Project Management Office)の不備にある。頭では分かっていても「二の足」を踏んでしまうのだ。
無論、失敗例ばかりではない。先述のEricssonは、DX(Digital Transformation)推進にあたり、CTO(最高技術責任者)とCIO(最高情報責任者)の連携不足、仕入先との協働意識に欠ける購買、アジャイル開発の対極にある製品企画といった悪弊を徹底排除、オペレーティングモデルの再構成を果たした。成功企業は、過去に拘泥することなく、事業環境変化をきっかけにオペレーティングモデルを再構成し、戦略を確実に実行する。経営における「兵たん」とは、オペレーティングモデルの動的進化に他ならない。(後編へ続く)
田村誠一(Seiichi Tamura)
ローランド・ベルガー シニアパートナー
外資系コンサルティング会社において、各種戦略立案、及び、業界の枠を超えた新事業領域の創出と立上げを数多く手掛けた後、企業再生支援機構に転じ、自らの投融資先企業3社のハンズオン再生に取り組む。更に、JVCケンウッドの代表取締役副社長として、中期ビジョンの立案と遂行を主導、事業買収・売却を統括、日本電産の専務執行役員として、海外被買収事業のPMIと成長加速に取り組んだ後、ローランド・ベルガーに参画。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授