書くのが苦手で嫌いだった私が、なぜ書けるようになったのかビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2020年12月10日 07時07分 公開
[上阪徹ITmedia]
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 発見の1つは、「立派な文章を目指す必要はない」ということだ。時間がかかることをはじめ、多くの人の悩みに共通しているのは、文章に対して肩に力が入り過ぎていること。うまい文章、立派な文章を書こうとして、四苦八苦するのだ。

 しかし、考えてみてほしい。ビジネスで日常的に使う文章に、誰がうまさや立派さを求めているか。そんなものは誰も求めていないのだ。にもかかわらず、みんながこのわなに陥るのは理由がある。小学校の作文教育の呪縛である。

 実は小学校以来、ほとんどの人が文章を習っていないのだ。だから、あのときの教科書が標準になってしまっているのである。そんなものは誰も求めていないのに。小難しい評論文もいらなければ、新聞の1面の中ほどにあるエッセイのような文章もいらないのに。

 もとよりあれは、プロの文章家が書いたものである。DIYが趣味の人に、プロの大工さんの仕事を求めるようなものなのだ。文章は誰でも書けてしまうから、こういうことが起こる。まずは、この呪縛から逃れることだ。

 そして発見の2つ目は、文章は何からできているか理解することである。多くの人が「どう書くか」に頭を悩ませ、時間を使うのだが、大事なところはそこではない。「何を書くか」なのだ。私は、これを文章の「素材」と名付けた。書けないのは、「素材」がないからだ。

 そして何からできているのかに気付けないと、「素材」を目を向けずに、表現やら言葉やらにばかり目が向いてしまう。一生懸命に表現する言葉や形容する言葉を思い付こう、思い出そうと悪戦苦闘する。そんなものはいらないのに、である。

 象徴的な例を挙げておこう。求人広告のコピーで新人が必ずやってしまうコピーだ。

「当社は、とてもいい会社です」

 確かにいい会社なのである。だから、思わずこう書いてしまう。そして「いい」に置き換わる言葉を探そうとする。すてき、素晴らしい、とんでもない、類を見ない、びっくりする……。これを考えるのが、いかに大変かは、多くの人が知っている。

 では、「素材」に目を向けるとどうなるか。

  • 創業以来10年間、2桁の増収増益が続いている
  • この10年間、社員が1人も辞めていない
  • 社長が誕生日にバースデープレゼントをくれる

 どうだろう。「いい会社」「素晴らしい会社」「すてきな会社」といわれるのと、どちらが伝わるか。この話をすると、目からウロコが落ちる人が多い。必要なのは書く力ではなく、素材だったのだ。

 本の書き方を学ぼうと本を読む人は多い。しかし、私は1冊も読まなかった。読んで書けるとは思わなかったから。パラパラめくって、そう感じていた。そして、本当に書けるようになる文章の本を作りたかった。『文章の問題地図』は、そういう本になっている。

 私自身、文章を書くことを仕事にして、だんだん実感していったのは、この思いだった。

「なんだ、これで良かったのか」

 本で紹介するポイントに気付ければ、誰もが私と同じ感想を持つだろう。そして、スラスラと文章を書いているはずである。

著者プロフィール:上阪徹

1966年兵庫県生まれ。リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスに。著書に『メモ活』『成城石井 世界の果てまで買い付けに』『職業、挑戦者 澤田貴司が初めて語る「ファミマ改革」』『JALの心づかい』『文章の問題地図』『10倍速く書ける 超スピード文章術』など多数。インタビュー集に『外資系トップの思考力』『プロ論。』シリーズなど。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品も80冊以上に。


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