ここまでの発表数値を見ると米国の個人消費はしっかりしている。国内では過度な悲観論が修正されていく可能性もある。阪神タイガースの快進撃が景気下支え要因となるかも注目だ。
6月の「ESPフォーキャスト調査」(経済企画協会が実施するアンケート調査)によると回答者37人中、既に景気転換点を通過したと回答した人が8人だった。残る29人に聞いたところ、今後1年以内に転換点を通過する確率は平均で42・5%の予測であった。「既に通過」の人を100%として換算すると合計54・9%となる。このことからも景気後退か踊り場かは、ほぼ五分五分だということが分かる。
企業心理は悪化している。6月調査の日銀短観の業況判断DIの「最近」の動きをみると、大企業・製造業の業況判断DIはプラス5で、3月調査から6ポイント悪化した。また、3月調査の「先行き」のプラス7と比べて2ポイント悪化した。想定したより弱い数字であるのは2四半期連続のことになる。
6月調査の数字は事前予想の平均よりも若干しっかりした数字ではあったものの、3四半期連続の悪化と景気判断の厳しさを示唆する内容であった。原油・原材料価格高や、米国景気の減速などが要因となって、幅広い業種でDIは悪化した。
大企業・製造業の仕入れ価格DIは59で1980年5月の77以来の 「上昇」超だ。原材料価格の上昇の影響で第2次石油危機以来の水準である。コスト面が収益悪化要因となっている。
全規模・全産業の業況判断DIはマイナス7と、3月調査から3ポイント悪化した。企業の景況感がコスト高などで悪化していることを裏付けた。
2008年度の全産業・設備投資計画は大企業では前年度比2・4%増、中小企業は20・2%減。最近年の動きに比べ今年は弱めであると言えそうだ。
しかし、生産・営業用設備判断DIは中小企業で若干過剰感が強まったが、「最近」「先行き」を通してみると、おおむね横這いでそれほど過剰感が強まる感じはしない
雇用判断DIは「最近」では規模・業種6つ全てのカテゴリーで3月調査比過剰方向に動いた。中小企業・製造業では3で2005年9月のプラス1以来の「過剰」超、2004年6月のプラス5以来の水準になった。雇用面に若干悪化の兆しがみられるが、雇用判断DIを「最近」「先行き」を均して見ると、まだおおむね横這い圏という感じだ。
在庫水準判断DIは大企業・製造業で「過大」超が3月調査比やや低下方向に動いたが、中小企業・製造業では「過大」超が3月調査比やや拡大方向に動いた。総じて見れば横這い圏の動きで、在庫調整が必要な状況ではないと思われる。
鉱工業全体でみて在庫調整の必要性は低く設備や雇用の過剰感はあまりないため、7月末発表の4〜6月期の米国経済成長率の持ち直し等で輸出増などの期待が出れば、日本の景気が上向く可能性が出てこよう。
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