そして今、こうした働く現場の実態がありながらも、企業にとって、いかに若手社員の人達に一生懸命仕事を頑張ってもらうか、そしていかに仕事を通じて人間として成長してもらうかが、企業経営の根幹にかかわる重要な経営課題になっています。
わたしが考えるそのために必要なポイントは、特に若手に対するマネジメントスタイルを「迎合」から「鍛錬」へと転換することです。具体的には、これまで多くの企業が展開してきた「できるだけ褒めてあげる」とか「喜びそうな仕事を与えてあげる」といった未熟な若手を容認し迎合的に接するスタンスから、責任をもって働きしっかり成果を出すようにマネジメントする、という鍛錬のスタンスに転換していくということです。マネージャーが若手ときちんと対峙して、能力の面でも意識の面でも有能かつ志の高い職業人として一回り成長させる必要があるのです。
一言でいうと、優秀でやる気のある社員をスタンダードにおいて、まだまだ未熟な若手社員を厳しく躾けるということです。組織に属している以上、例えば「ルールは徹底的に守らせる」、「できていないものには客観的にできていないと言う」、「手抜きや頑張り抜かない姿勢に対しては断固正す」というスタンスがまず基本です。まさに職業人・組織人としての本来の規律と厳しさをきちんと叩き込むこと。特に、今の若い人に欠けている意志力や努力する力、困難から逃げない姿勢を鍛えることは、知識やテクニックを教える以上に必要なことだと考えます。
その上で大事なのが動機づけです。最近の若い人の傾向として、現実は仕事に半身であるものの、心の中では「ちゃんと仕事を頑張りたい」と考えている人が実は多いというのは先に述べた通りです。そこに上手に働きかけること。多少面倒でもマネージャーが時間と気持ちを若手の動機づけに使ってあげることで「ワーク=ライフ」へと方向づけられるのではないでしょうか。ただし、ここでも迎合的にならないことは重要です。例えばコーチングのように、本人の意向を何でも「分かる、分かる」とただ理解を示しているだけではダメだということです。話を聞いてあげることは大事ですが、まだ目線やスキルレベルの低い人に単に受容的なだけでは、現実的にはむしろ甘えて意識が緩んでしまうリスクも高いのです。
不況の時代を迎えた今、逆に若手社員を教育できるチャンスでもあります。今は辞めたら他になかなか働き場がないという危機感を誰もがもつ時代。少しは我慢がきくでしょう。また震災の影響もあって、社会に貢献したいという意識や地に足をつけた働き方を求める若者も増えてきています。その意味でも今は、若者に充実した職業人生を送るために「ワーク=ライフ」の働き方を身につけてもらう良いタイミングではないかと期待しています。
ビジネスアナリスト
長野県生まれ。東京学芸大学教育学部を卒業後、戦略系経営コンサルティング会社株式会社XEED入社。アナリストとしてさまざまな社会事象の分析に従事。近年は、企業の人材育成やキャリアカウンセリング、および組織活性化支援など人事系の分野でも活躍。大学生・転職希望者に対する適職実現の講演やセミナーでも好評を博している。著書に「女性職の時代」(角川ONEテーマ新書)、「ワーク=ライフの時代」(ベスト新書)がある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授