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» 2012年09月07日 08時00分 公開

品質にこだわり、指名してもらえる商品を――博水社 田中社長石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(2/2 ページ)

[石黒不二代(ネットイヤーグループ),ITmedia]
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チャレンジし続ける姿勢

 現社長の秀子さんは、そんな父の背中を見て育っています。子供の頃から工場を走り回っていたのですから、実際の経営や、製品開発は甘いものではないことを父の苦労から本能的に知っていたのだと思います。会社を継ぐことを決意して、東京農業大学に入りなおし、一からやり直すことにしました。

 大手なら営業、広報と業務を分担しますが、すべてを知るべきと、スーパーのマネキンになり、お客さまの声を直接聞きました。商品開発には、大手さながら何千回と処方を繰り返します。究極の最後のひとつを納得ゆくまで出すのに時間が掛かるもので、素材へのこだわり、人が飲むものなのでその安心、安全を追求し続けています。

 秀子さんは、父の代に築いた資産を大切にしながら、新しい博水社を目指しています。秀子さんの言葉を伝えます。

 ・ハイサワーレモンには世界的にも希少な独自搾汁方法のレモン果汁を使用しています。通常のレモン果汁を抽出する工場と異なり、皮ごと粉砕しておしつぶす搾汁方法が多勢の中、あえて生搾りレモンのようにひとつひとつ半分に切って、真ん中のおいしいところだけを搾汁した果汁を使用しています。

 ・2003年には、ダイエットハイサワーを開発しました。当時はお酒を割るものにダイエットが必要かと酷評されましたが、今では看板商品です。

 ・今年2月に発売したフルーツビールテイストのノンアルコール飲料「HiHop」は、数千回の試作を経て製品化しました。果汁の調合は長年のノウハウの蓄積、カロリー・プリンタ体・糖質・アルコールの4つを0%にした飲料、大手ができなかったことを博水社は可能にしました。女性社員たちの一押しはシャルドネビアテイストです。

 ・そもそも、お店に行ってみて気付いたことなのです。お酒を割らずにノンアルコールで飲んでいる人も多かった。飲み方は多様化しているのです。

 ・お酒の濃さは好き好きだけれども、割り方の黄金比率というものがあり、居酒屋さんの使う業務用のタンブラーには印が印刷されており、焼酎を入れる目安になっています。それを伝えるのはメーカーの役割です。

 ・車を改造して、巨大なボトルを背負った宣伝用トラックを作りました。経理に請求書を持っていったら驚かれました。「ハイサワー」のロゴを露出させ、製品の特徴であるレモンの一番搾りのことも伝えたかったのでペイントしました。このトラックが渋谷の交差点に止まると「わ・る・な・らハイサワー」という歌声が聞こえてくるそうです。さまざまな人とのコミュニケーションを大切にするために、その場で飲める移動販売車もあります。

 秀子さんと話をしていると、気さくで明るい方であるという印象を持ちます。しかし、その口からこぼれる言葉からは、3代にわたって経営をしてきたノウハウ、特に開発ノウハウが遺伝子のように組み込まれているのだなと思えてきます。そして、秀子さんの代になって、博水社がネクストステージに上がったと思えるのが、マーケティングコミュニケーションです。どこかで学んだわけでもないのに、マーケティングの基本を抑えています。秀子さん自身が、ユーザーと直接接することで培ったノウハウなのだと思います。

 博水社の商品は脇役。お酒の割り材だから脇役。だからこそ、ウイスキーが流行ればハイボール作りに使われ、沖縄に行ったら泡盛の脇役に。「主役のお酒を割らせてもらい、おいしく変身させるのが名脇役」これも、秀子さんの言葉です。

著者プロフィール

石黒不二代(いしぐろ ふじよ)

ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長 兼 CEO

ブラザー工業、外資系企業を経て、スタンフォード大学にてMBA取得。シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立、日米間の技術移転などに従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、大企業を中心に、事業の本質的な課題を解決するためWebを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。日経情報ストラテジー連載コラム「石黒不二代のCIOは眠れない」など著書や寄稿多数。経済産業省 IT経営戦略会議委員に就任。


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