「なぜ自分の商品をお客様は買ってくれないのでしょうか」と聞く人がいます。それは、説得の仕方がヘタだからです。相手は、自分は正しいという思いで「この商品は買わない」と言っています。「そこをなんとか買ってくださいよ」と言っても、相手がイヤがっていることはムリです。
相手は、きちんとメリット・デメリットを計算しています。メリットよりデメリットが多い場合に断るのです。デメリットが多いのに押し込もうとすることは不可能です。万が一ムリヤリ押し込むと、相手に対して借りが発生します。決して儲けにはなりません。
説得する時は、相手が計算しているメリット・デメリットの中で、メリットが増えるようにします。そのために会話が必要なのです。どんなに価値があるものでも、相手が知らないことは価値がないのと同じです。
結果を出す人は、時間と空間を広げて説得します。
相手が「この商品は、今自分が使っている商品より高いからイヤだ」と言う判断は、正しいです。値段というデメリットがメリットより大きく見えるからです。
時間軸を広げて説得するというのは、「この商品は、今までお使いの商品よりも10年長持ちします」と、時間のレンジを伸ばしてあげることです。そうなれば「10年で割ればこっちのほうが得」というメリットが生まれます。
「この商品は掃除の手間がかからない」というのもメリットの1つです。今までの掃除機は、ゴミを出す時に手が汚れるということで主婦は困っていました。今の掃除機は、手が汚れないように変わっています。「この掃除機を使うと掃除の時間が減ります。その分、子どもと遊ぶ時間ができるから、この掃除機を買うと奥さんが喜びますよ」というのが、空間軸を広げる説得です。自分だけでなく、奥さんや子どもにもメリットがあるという展開が、空間的な広がりです。
物事を判断する時は、「今、ココ」という時間と空間が狭い中でのメリット・デメリットを計算しがちです。それを広げた形にしてあげればいいのです。
例えば、ダンスを習うかどうか迷っている人がいます。その人は、「ダンスを習っても、舞踏会はないし、大使館のパーティーに招ばれることもないからなあ」と、メリットを感じられないで悩んでいるのです。
その時に「ダンスを習うと日常生活の立ち居ふるまいがオシャレになりますよ」という説得は、空間的な広がりです。「今ここで習っておくと、この先50年、あなたは美しい歩き方、美しい姿勢でいられますよ」という説得は、時間的な広がりです。
ジャパネットたかたの高田さんは、ビデオカメラを売る時に「これだときれいに写ります」とは言いません。「このビデオカメラで撮影すると、お孫さんの運動会がブレずに撮れます。お孫さんに喜ばれますよ」「パソコンを買って、その映像を取り込んで、映像をお孫さんに送ることもできます。そうすると、お孫さんとやりとりができますよ」と、空間的な広がりのある説得をします。
相手に使い方を教えてあげるのです。機能は分かっても、それを使ったメリットが分からなければ、買う気にはなりません。相手が欲しいのは、機能ではありません。それを使ったことにおけるメリットです。
説得で一番大切なことは、話し手がウソではなく、「これは相手に絶対メリットがある」と本気で感じていることです。相手のためにムリからにつくったメリットでは説得できません。泣きの営業は、自分のためであって、相手のメリットにはならないのです。
相手のためになると信じて伝えることが、結果につながるのです。
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は、『結果を出す人の話し方』(水王舎)など、1,000冊を超す。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授