要素、すなわち個人ではなく、「AさんとBさん」、あるいは「BさんとCさん」を結ぶ関係性の線の数を数え、「10本の関係性のあるチーム」と捉えるのだ。
この5人のチームの仕事が増え、人数が5人増えたとき、要素還元的なとらえ方では、「5人だったチームが10人になり、2倍の人数になりました」という数え方をする。
他方、協働システム的にとらえた場合には、10×9÷2=45で、「45本の関係性があるチーム」となる。関係性の線の本数が10本だったのが、4.5倍の45本になったと捉えるのだ。
つまり4.5倍、合意形成が難しくなり、意思疎通が難しくなったということだ。
専門的にいうと、「複雑性が増大した集団に変貌した」という見方をする。これが、私たちの考える組織観である。
近年、「ミドルは不要である」とか、「組織はフラットなほうが良い」とかいわれることがある。本当であろうか。私たちの考える組織観で検証してみよう。
例えば、100人の組織があるとする。100人の組織が完全にフラットで、リーダーが一人もいない場合、100×99÷2=4950となり、4950本の関係性の線があることになる。これでは複雑性があまりにも高すぎて何も決められないし、組織として連携して動くことは絶対にできない。
複雑性を縮減するためには、関係性の線の本数を減らす必要がある。
例えば、100人の組織を10人のチーム10個に分ける。10人のチームのうち一人がリーダーになる。チーム内の関係性は、10×9÷2=45。10チームあるので、45×10=450となる。
各チームのリーダーが集まるリーダー会という上位組織ができ、リーダーは10人なので、リーダー会の関係性も45本となる。10チーム内の関係性450本に、リーダー会の関係性45本を足すと、495本となる。
つまり、フラット時に4950本だった関係性は、10分の1の495本に減少し、複雑性も10分の1に縮減するということだ。これなら、組織として意思決定することもできるし、チームや個人が連携して組織として活動することもできる。
関係性に着目した組織観をもっていれば、ミドルのいない組織はあり得ないし、度を越したフラット化が組織力を減退させることが分かるだろう。
要素還元できない協働システムという組織観では、いかにして組織の複雑性を減縮していくか、関係性の数を整理して減らしていくかが、組織を論じる際に常に重要になるのである。
今後、企業の成長スピードを左右する「人」や「組織」に着目したマネジメントがより重要になっていくだろう。労働環境の大きな転換点である働き方改革を、自身のマネジメントを見直す機会と捉え、「人」や「組織」の可能性を最大化させる第一歩へとつなげていただきたい。
1961年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートに入社し、人事部で採用活動などに携わる。
組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て独立。2000年に株式会社リンクアンドモチベーションを設立し社長に就任。13年から現職。
モチベーションエンジニアリングという同社の基幹技術を確立し、幅広い業界からその実効性が支持されている。
著書に、『会社の品格』(幻冬舎新書)、『松下幸之助に学ぶ モチベーション・マネジメントの真髄―ダイバーシティ時代の部下の束ね方―』『1日3分で人生が変わるセルフ・モチベーション』『変化を生み出すモチベーション・マネジメント』(以上、PHPビジネス新書)、『お金の話にきれいごとはいらない』(三笠書房)など多数。3月に新書籍『モチベーション・ドリブン』が発売予定。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授