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» 2022年08月22日 07時09分 公開

トランスフォーメーションの羅針盤となるシナリオプランニングの重要性と活用手法(2/2 ページ)

[神谷洋次郎ITmedia]
Roland Berger
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1:全社戦略と各事業部の戦略との結節点にする

 用意するシナリオは事業の将来を考える上での地図として全社で共有し、またシナリオに基づいて主要な戦略を効果的に連動させる必要がある 。

 次世代のポートフォリオを描き、その実現に向けたM&Aや提携戦略を検討する。また、競争力の源泉となる技術戦略を策定し、競争力を強化する組織・人材戦略を構築する。それら一連の戦略を柔軟に組み替えていく際にも、シナリオに連動させることが重要だ。全社にまたがるシナリオは個別の事業においても活用できる。製品価格の変動や技術の開発動向など 、シナリオにおける変数の一部を「各事業でも注視する変数」に設定するとよいだろう。

 事業ごとでの中長期の戦略を策定する際のよりどころとなり、適切な投資判断の材料にもなる。シナリオは、全社戦略と各事業部門の個別戦略を連動させる結節点として活用できる。

2:全社方針として共有する

 既存事業が大きく変化すれば、携わる社員が進むべき方向性に悩むことも多くなるだろう。その際に全社シナリオを共有しておけば、「シナリオが想定する変化の幅」と「それに対応する行動」を ディスカッションすることで認識を合わせやすくなる。

 中期事業計画を策定するプロセスなどを通じたオフィシャルなコミュニケーションも有用だが、機会はそれだけではない。経営者が大きな方向性とその不確実性を都度共有することで、社員の不安を取り除き、モチベーション高く仕事に向き合ってもらいやすくなる。

 またシナリオは、人材競争が激しくなる中で、優秀な社外人材を獲得する上でも、社としての方向性を理解してもらうために有効であろう。

3:外部ステークホルダーの巻き込み

 会社のかじ取りを大きく変化させる際には、社内のみならず社外との丁寧なコミュニケーションが重要である。投資家にも適切に説明しなくてはならない。

 この点、欧州企業が参考になる。脱炭素やサーキュラーエコノミー関連事業でリードする欧州では、投資家に対してうまくアピールし、企業価値を適切に株価へ反映することに成功している事業者も多い。

 加えて、脱炭素やサーキュラーエコノミーなどの社会課題を起点にした事業展開では、既存の事業拠点や設備からの撤退・転換など、地元住民にも大きな影響を与えるものも少なくない。その際、どういったステークホルダーへ適切に情報を伝え、適切な理解を得ていくのかを考えるうえでも、説明の根拠となるシナリオを準備することが大切である。

シナリオには経営企画部門の一層の活躍が必須

 困難が伴うトランスフォーメーションにおいては、経営のみならず社内で納得度の高いシナリオを策定し、活用することが鍵になる。経営者は常にさまざまな外的環境の変化に目を光らせ、社内への啓蒙を継続するためにも社内インテリジェンス機能としての経営企画部門の一層の活躍が必須となる。世界がよりつながり、相互に影響を及ぼし、不確実性が高まる中では、独自の調査や分析機能の強化に加え、さまざまな社外リソースの使いこなしも必要となるであろう。シナリオプラニングを通じ、経営企画部門が経営者の参謀として、改めて重要な役割を担う必要があるのだ。

著者プロフィール

神谷洋次郎(Yojiro Kamiya)

ローランド・ベルガー プリンシパル / 東京オフィス

一橋大学法学部卒業、コロンビア大学公共政策大学院修了。総合商社、米系投資銀行、米系コンサルティングファームを経て、ローランド・ベルガーに参画。

エネルギーを中心に、総合商社、通信、電機等幅広いクライアントに対して、長期ビジョン/中計策定支援、事業/成長戦略、新規市場参入戦略、などのプロジェクト経験を豊富に有する。


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