今。EQと関連するトピックとしても心理的安全性に関する相談が増えています。
お互いが心を開いていない状態だと心理的安全性は担保できません。「いかにオープンネスを高めるか」をEQとつなげてトレーニングすることが多くの企業から求められています。
皆さん、心理的安全性が「大事だということ」「きちんと見ないといけないということ」は理解しているし思っています。そのためにダイバーシティ&インクルージョン、アンコンシャス・バイアスなども良く認識されるようになってきています。「多様性を認めて、思い込みを配して部下たちとコミュニケーションしなければならない」、上司の皆さんも多くがそう理解しています。
しかし、大事だと理解していることと、実際にそうしたいかということはまた別の問題です。個別の話としては、「その部下の考えや行動はどうなのか」となります。
高山さんは言います。「人格はなかなか認められないかもしれないけど、EQの技術で気持ちを受け止めたり、認めてあげることはできますよね。別に本心から部下の人格や考えを認める必要はなく、職場での関係性を作るために、今部下が言っていることを認めてあげるんですね」。
EQ的にこのようにコミュニケーションするのが望ましいと分かっている。でも、分かっているのだけれど「そうしたくない」みたいなことって、確かにありますよね(笑)。
「嫌いな部下に対して、こいつにはEQを使いたくないとかあるんですよ。しかしEQは、ある目的を達成するために、必要であれば使わなきゃいけない技術なんです。だから「この人には使いたくない」と言うけど、それはビジネスの成果に対して影響があるの? ないの?って聞きます。
影響がないなら使わなくていい。「やりたくないなら、やらなくてもいいよ」と言いますね。でも「彼も戦力の1人で、なんとかうまくやる必要があるんです」って言うのなら、「じゃあ、EQ使ってくださいよ」ということです」(高山さん)
一番は「目的を達成するかどうか」です。別にその人と仲良くなることが目的ではないんですね。目的を達成するために必要な人材であれば、その人に対してEQを使いましょうということですね。
つまり、EQを使う時にまず考えなければいけないことは、「目的・ゴール・成果」です。仲良くなるために使うのではなく、ビジネスの成果のためにEQを使うのです。
EQは開発可能なものです。感情を扱う一つの技術であると言ってよいでしょう。ただ、感情を扱うものであるがゆえに、私自身もそうなのですが、EQをビジネスライクに(技術的に)使うことには抵抗があるのではないでしょうか。
これについて高山さんは、こんな風にアドバイスします。
「“俺、これからEQ使うよ”ってカミングアウトすればいいんですよ(笑)。わざとらしいと思われてもいいから、“俺はやっぱりEQの技術が大事だから使う”って、隠さずに言えばいいんです。EQを内緒で使い始めても“あの人、変に宗教がかってない?”とか言われちゃう。それは黙っているからなんですよ。だから「なんかEQってのがあってね。目的を達成するために必要な時は使ったほうがいいんだ。俺は今必要だから使う”と宣言する」
高山さんは、EQを使うことについて、「絶対宣言したほうがいい。EQは隠れて使うもんじゃない。いいものなんだもん。人をおとしめるために使うわけじゃないでしょ。だから絶対“使う”って宣言したほうがいいんだよ」と言います。なるほど確かにと思います。
高山さんは、自社において会議中に「今日の会議、俺どれぐらいEQ使ったほうがいい?」って聞くそうです。
「たまに“今日はEQなしのガチで来てください”って言われるわけ。俺、すごく詰めますからね(笑)。理詰めで逃げ道とか作らせないから、ガーッてやるでしょ。そうすると“すみません、高山さん。20パーセントEQ使ってもらえませんか?”“OK〜”って(笑)今日はEQなしのガチで、緊張感を与えてもらったほうがエネルギーが出るなと思ったら、“高山さん、今日はガチで来てもらえます?”“いいんだな、ガチで”みたいな」(高山さん)
「2割でいいの?」「あ、すみません、5割でお願いします」などと言い合いながら会議を進めるそうです。これ、面白いなと感じます。チームの関係性、案外手っ取り早く良くなりそうですよね。
発揮するEQのボリュームをお互いオープンに変えていく。これができる組織は、確かにいい組織だなと思いませんか。
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授