1950年代以降、「大規模農業」によって食糧は石油や天然ガスを使った製品に姿を変えるようになりました。そして、肥料が繰り返し使用されるようになって久しく、そのため土から有機性栄養素が奪われてしまいました。このような、石油をエネルギー源とする重機の助けを借りている集約農業によって緑の革命が可能になり、世界人口が大幅に増加しました。
しかし、緑の革命は石油化学製品に依存する好ましくない農業を発展させてしまいました。米国政府が大規模農業に対し援助を行っているエタノールは今、食糧供給を脅かしています。農業経営者は自動車燃料用のエタノールを作るためのトウモロコシを栽培し、政府補助金を受け取っています。
そのため、世界に供給されるトウモロコシはガソリンに姿を変え、その結果、世界中で食糧パニックが起こっています。これにより穀物やパンやトルティーヤなどの加工食品の値段がますます上昇の一途をたどる事になります。燃料費の上昇により、いつか世界は、世界での食糧供給ではなく、地域での自給に戻る日が来るでしょう。
現代の代替エネルギーでは、化石燃料システムに取って代わることはできません。代替燃料にはいくつかの重要な問題があります。それは、エネルギー投資に対してどのくらいのエネルギーを回収することができるのか、エネルギーは24時間入手可能なのか、環境に悪影響はないのか、そして、どのようなインフラが必要なのか、といった問題です。
政府のリーダーはこうした代替エネルギーを選んだ際に付随する厳しい現実と向き合わなければなりません。米政府は、新しい計画を立てられるまで、国が機能できるよう何らかの手を打たなければなりません。どの地域でも太陽光エネルギーや風力発電にはコストがかかり、導入には限界があります。
また、「精炭」は使えません。なぜなら、精炭工場も費用効果の高い二酸化炭素捕捉プロトコルもないからです。有毒な廃棄物を排出し、採掘により山が破壊され、大量の水を消費することから、石炭は環境に悪影響を与えます。タールサンドは石炭よりも悪影響です(合成潤滑油をビチューメンから1バレル作るのに、2トンのタールサンドが必要)。
ビチューメンを入手するだけでも、環境を破壊し、天然ガスを浪費し、水を汚染してしまいます。シェール油はまだ確認されていませんが、岩石や水を大量に浪費すると言われています。水素エネルギーは実行可能なオプションではなく、今後も実現には時間が掛かるでしょう。そして、原子力は数多くの理由から問題視されています。その理由には、ウラン不足、誤作動の恐れ、高コスト、有毒廃棄物、そして建設や許可を得るのに時間が掛かるという点が挙げられています。
北朝鮮やキューバは、ソ連の崩壊により石油のライフランを失ってしまいました。北朝鮮政府によるトップダウンの解決策は失敗し、それによって飢餓やインフラの崩壊が引き起こされました。
また、キューバ政府は問題を国民に押し付けました。しかし国民は、地域に化石燃料を使わないフードシステムを作り立ち直りました。そのシステムは質が良く種類が豊富な食糧や、より健康に良い食事を生み出しています。米国では、「再地域化」が始まっています。米国は適応し、今までの過剰消費をやめる必要があります。そのためには、食糧の地産を始めとする地域での自給が必要不可欠なのです。
一見、エネルギー問題と食料問題は関連性がないように見えますが、バイオエタノールの事など深い関連性があることが良く分かります。それゆえに石油に代わる代替エネルギーを考えるべきなのでしょうが、いまだにその具体的解決には至っていません。むしろ、エネルギー消費の節約をすること、そして、各地域での自給が今後は必要になってくるでしょう。
著者紹介
マイケルC・ルパートは、調査ジャーナリストです。著書に「Crossing the Rubicon」があります。
経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授