(3)顧客にとっての"ぴったり"の提供
理解が高まった結果、それぞれにぴったりな商品・サービスやコミュニケーションをし体験価値を最大化していくことができるようになる。先述のアパレルECの事例に当てはめて考えると、高級靴をよく履くユーザーに対するお手入れ方法のコミュニケーション、顧客の購入頻度や着こなし状況に合わせたリコメンデーション、コーディネートパターンの変化によるトレンドの先読みと商品のタイムリーな提供等ができるだろう。更に、見えてきた気づきを束ね、例えば、洋服借り放題・シェアリングといったように新しい事業を生んでいくことも可能になる。
これは、企業にとっては、顧客にぴったりを提供し関係を深めることができると共に、活動の効果や生産性を高められるようになることを意味する。そして、時間軸として先を見据えるようになるため、顧客が求めるタイミングを起点としたエンジニアリングチェーンに組み替えられるということでもある。企業活動そのものが「真」の顧客起点での活動へと生まれ変わることが出来るのだ。先述の無印良品では、販売・マーケティング部門だけでなく、企画・生産等のあらゆる部門が「MUJI passport」から生成された顧客一人ひとりの情報を起点した活動へと進化させている。
ぴったりな製品・サービスの提供が顧客との関係性をより強固なものにしてくれる。エンゲージメントが高まった顧客は、更に積極的に自社の活動に関わってくれるようになり、更に幅広い情報を取得可能となり、好循環が回っていくのである。
「デジタル」は、圧倒的な量と質の顧客との「直接の対話」を可能にした。オンラインプレイヤーや流通プレイヤーだけでなく、直接の顧客から遠ざかっていたメーカーにもそれができるのである。こうした中、企業の競争力の源泉は、顧客との対話を積極的に進め、顧客一人ひとりを起点に活動し、ぴったりな価値提供ができているかということに移行していく。そして、その活動の蓄積によって、生み出されたファンの数こそが、勝敗を分けていくのではないだろうか。
高橋啓介(Keisuke Takahashi)
ローランド・ベルガー プリンシパル
慶応義塾大学環境情報学部卒業後、ローランド・ベルガーに参画。自動車、商社、鉄道など幅広いクライアントにおいて、事業戦略の立案及び、営業・マーケティング戦略、ブランド戦略の立案・実行支援に豊富な経験を持つ。顧客の”思い”を大事にした、顧客の「腹に落ちる戦略」の実現を信条に「地に足が着いた」コンサルティングを志向。
橋本修平(Shuhei Hashimoto)
ローランド・ベルガー シニアコンサルタント
京都大学大学院工学研究科修了後、ITベンチャー企業を経て、ローランド・ベルガーに参画。自動車、大手商社、金融などを中心に幅広いクライアントにおいて、新規事業戦略、成長戦略、顧客開拓戦略、オペレーション戦略などを始めとする多様なプロジェクト経験を有する。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授