次世代サプライチェーンマネジメントによる全体最適の拡張視点(2/2 ページ)

» 2020年01月27日 07時02分 公開
[小野塚征志ITmedia]
Roland Berger
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 といった、供給プロセスの範囲を超えた“全体最適”を実現できれば、それ自体が競争優位の源泉となる。もはや、「よい製品を作れば売れる、売れれば儲かる」という時代ではないからこそ、将来のさらなる成長を実現するためには、より広い範囲での最適化を追求し、以て企業としての競争力を高めることが枢要である。

3、見える化と仕組み化の重要性

 翻って、“全体最適”を実現するためには“見える化”が欠かせない。サプライチェーンのプロセス・機能別に、コストを分解できなければ、収益が悪化してもその原因を把握できない。製品別・顧客別に収支をブレークダウンできなければ、ある施策を実行することでの収益の影響をシミュレーションできないからである。

 そして、“見える化”に加えて、“全体最適”を促進するための“仕組み化”も必要である。生産・物流・営業といった部門ごとに収益の最大化を図ることも大事だが、それに任せていると“個別最適”に陥る。“全体最適”の追求を目的とした部門横断の組織を設置し、十分な権限と責任を与えることが肝要である。

 つまるところ、“見える化”と“仕組み化”なくして、サプライチェーンマネジメントによる“全体最適”は実現し得ない。サプライチェーンマネジメントを「将来の成長を実現するための競争優位の基盤」にしようとするのなら、“見える化”と“仕組み化”の範囲を供給のプロセス以外にも拡張すべきといえよう。


 さて、本稿を読まれた方の属する企業は、“全体最適”を実現できているだろうか。上述の項目に照らしてチェックして欲しい。「“全体最適”を実現できていない」「“全体最適”の範囲が供給プロセスに限定されている」とすれば、“見える化”や“仕組み化”を進めることで、収益力の向上を図る余地が多分に残されているということである。

著者プロフィール

小野塚 征志(Masashi Onozuka)

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。

サプライチェーン/ロジスティクス分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革等を始めとする多様なコンサルティングサービスを展開。2019年3月、日本経済新聞出版社より『ロジスティクス4.0―物流の創造的革新』を上梓。


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