当然、相手から「〜してほしい」という要求はありませんが、一緒に過ごしていると「お腹が空いているのではないか」「暑いのではないか」と気づくようになったはずです。植物なら「土が乾いているから、お水をやらなくては」というように目で見ていろいろなことに気づいたのではないでしょうか。
これは誰かに強制されたわけではありません。それでもいろいろなことに気づけたのは、それが自分にとって大切な対象だからです。気づく力、つまり察知力は生活の中でも磨くことができます。
そして、お客さまから何の要求がなくても察知して行動できる人こそ、真の「気がきく人」だと言えます。
他の例えで言うならば、自分が好きな俳優さんや野球チーム、趣味の情報であれば、時間や労力を気にせずに収集できるのではないでしょうか。
つまり愛情や興味、関心こそ「質のよい気づき」の源なのです。仕事でも日常生活でもそのような思いを持って接することで、相手が言葉で発していない情報にも気づくことができます。
もちろん、職場や取引先では好きな相手や仲間を選べるわけではありませんから、苦手な人もいるかもしれません。「愛情を持つ」のは難しくても、興味や関心を持つことから始めることです。
CA時代は接客に苦慮するお客さまを担当するときでも、「きっとこのお客さまが笑顔になってくれるポイントがあるはず。それはどこだろうか?」と興味を持ちながら、対応を考えていました。苦手な上司や先輩に対しても「なぜ、こんな言い方をしたのだろうか?」と関心を持ってあれこれ想像を巡らせたものです。
もちろん、それで解決できなかったこともありましたが、「相手に興味、関心を持つ」という習慣は、その後の大きな財産になりました。
いろいろなことに気づき、気づいたらトライ&エラーでさらに気づきを得る。そのような習慣こそが、やがて仕事やプライベートで「よく気がきく人」と認識されることにつながっていくはずです。まず「相手に関心を持つこと」が気づく力の訓練になるのです。
訓練教官をしていたときは、寝る前に訓練生一人一人について「今日はどんな様子だったか」「その人とどんな会話を交わしたか」などを思い出すことを習慣にしていました。そうすることで得られた情報量やコミュニケーションの偏りに気づくことができました。その場合には翌日は優先的にその訓練生をしっかり観察するようにしていたものです。リーダーになると責任も増えて大変な思いをすることもあるでしょう。しかし、チームメンバーのひとりひとりにぜひ関心をもってほしいと思います。
元JAL CA・人材育成コンサルタント
お客さまから多くの称賛をいただき、際立った影響力を持つ客室乗務員として「Dream Skyward 優秀賞」を受賞。また、TOP VIP フライトの中でも最上級ハンドリングのフライトである皇室チャーターフライトのメンバーに抜てきされた経験を持つ。2010 年から2 年間は教官として訓練生を指導。マインドの授業に定評あり。2013 年JAL を退職後、人材育成コンサルタント/ 研修講師/ ビジネス書作家として活動。パナソニック、コーセー、ポーラなどの大手企業から中小企業、商工会、教育機関などで、接客マナー、職場内コミュニケーション、チームワーク、安全従事者としての心構えなどを広めている。著書に『「気がきく人」が大事にしている、ちょっとしたこと』(Clover出版)、『礼節を磨くとなぜ人が集まるのか』(青春出版社)、『接客1年生』(ダイヤモンド社)、『ザ・チームワーク』(アルファポリス)、『接客の一流、二流、三流』(明日香出版社)、『人生を決める『ありがとう』と『すみません』の使い分け』(アルファポリス)。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授