ここでひとつ、仲間が増える相談をするポイントを伝えます。それは「目的」(事業やプロジェクトを通じて誰の何を解決したいのか)と「原体験」(なぜそれを自分or自社がやろうと思ったのか)をセットで相談相手に伝えるということです。
相談をする際に優秀で頭の回転が早い人にありがちなのは、要件だけ伝えるというケースです。例えば、実際に私が受けた相談事例を挙げると、「大企業の役員のセカンドキャリアをサポートする新規事業をしたいがどうすればいいか?」というものや、「地元の材料を使った商品開発をしたいがどうすればいいか?」、「太陽光パネルの販売戦略で行き詰っているが何をすればいいか?」などといった内容です。共感が起きづらい相談の多くは、「正解探し」か「やみくもな手段集め」になっていることが多い。
では、目的 、原体験が明確な相談というのはどんな相談か。塚田農場などの居酒屋経営で名をはせた大久保伸隆さんが、独立して居酒屋「烏森百薬」を創業する時に私にしてくれた相談を紹介します。
ちなみに、「烏森百薬」は“名店のセレクトショップ”というコンセプトで大ヒットして今では予約の取れない名店となっています。当時、「従業員が幸せに働けるための飲食店をつくりたいんです」と大久保さんから相談を受けました。
原体験としては、飲食店は売上が上がるほどに仕込みの量が増えるなど、従業員負荷がどうしてもかかる構造に直面していたためです。だから、「店が繁盛しても従業員が疲弊せずに幸せに働ける飲食店を作りたい」ということでした。
飲食店経験者でもある私は、大久保さんの目的と原体験を聞いて強く共感しました。そして、「仕込みがいらない美味しい料理はできないか?」「飲食業界を守るという観点で他店の店舗以外の売上に貢献できないか?」という投げかけをしながら約半年間、話し合いを重ねました。
その後、最終的に大久保さんは、全国の名店から看板メニューを仕込み済みの状態で送ってもらい、仕込みをする時間を減らすことで、働く環境を整えることと繁盛店にすることを両立したのです。
このように「相談」という一見、誰でもできる行動ですが、「いつ相談するのか」「誰に相談するのか」「どのように相談するのか」など、それぞれにポイントがあります。“報連相”という言葉の印象からは新人や社会人経験が浅い人が相談をするようにも聞こえますが、私は逆だと思っています。
経営者やリーダーこそ相談する力を身に付けた方がいい。なぜなら、より複雑で難しい課題に対する意思決定にこそ「相談」が必要になるからです。より質の高い意思決定をするために、どう相手の力を引き出せるのか。他者や他社の力を頼りながら、課題の解像度を上げることで自然と“決まる”のが、最もいい意思決定だと感じています。
トイトマ 代表取締役社長
事業開発、事業戦略立案を専門として活動。新規事業開発支援、既存事業の戦略立案をハンズオンで支援するトイトマを創業し、代表取締役に就任。同時期、米国ハワイ州にて日本企業に対し、海外進出支援、店舗M&A仲介にも従事し、丸亀製麺の海外1号店などを支援。淡路島の新人気エリア「西海岸」の開発も手掛ける。
地域開発の新たなファイナンススキームを構築し展開するため、NECキャピタルソリューションと共にクラフィットを創業し代表取締役に就任。ヒューマンライフコード、ダイブ、ミナデイン、バルニバービ、フィットの社外取締役も務める。
大阪・関西万博2025での様々な取り組みをレガシーとして残すため、経産省、内閣官房、日本国際博覧会協会と連携し発足された、事業化支援チームプロジェクトチームのサブリーダーも務めている。
著書に『相談する力』(海士の風)などがある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授