サッカーも仕事も、監督や上司のゲームプランで戦います。何がなんでもシュートを打てばいいわけではありません。上司の意図するストライカーは別にいます。自分が求められているのは、アシストなのか、起点なのか、おとりなのか、ディフェンスなのかを見きわめます。
なんのために自分がこの場に呼ばれているかを考えるのです。TVのトーク番組に呼ばれると、私はまず、メンバーを見ます。お笑いの人とアイドルの組合わせの時は、私に求められているのは「文化人」という位置づけです。
登場人物全員が文化人の場合は、私に求められているのは「笑い」です。ほかの人たちに笑いをとる余裕がない時は、自分が笑いをとって、ちゃんとTVをまわしていく役になります。
同じ選手でも、その時のフォーメーションの中で求められる役割は変わるのです。
自分のしたいことを先行させると、自分の役割を取り違えます。上司のゲームプランも壊れます。
「おとりになってくれと言っているのに、なに勝手なことをしてるんだ」
「ストライカーはもういるのに、かぶっている」
と言われるのです。
そういう人は、次からは呼ばれません。選ばれない人は、頑張っているし、一生懸命です。選ばれない人は、頭はそこそこいいのに、プランを見抜いたり、役割を見抜くことが苦手なのです。選ばれるか選ばれないかは、たった1ミリの差です。だから、なおさら頑張って、「こんなに頑張っているのに、なぜ選ばれないのか」というストレスがたまっていくのです。
「どうすれば天職が見つかりますか」と良く聞かれます。天職を探している人は、「天職」を「自分の好きなこと」「努力を努力に感じないこと」と定義しています。
これは「天職」の定義が間違っています。「天職」の定義は「人のために役に立つこと」です。天職は、神様から与えられたミッションです。お客様、得意先、上司、仲間、会社など、まわりの人のために役に立つことを探している人が、結果として天職が見つかるのです。
天職は、好き嫌いを抜きにできることです。好きなことは誰でもできます。めんどくさいと思うことでも、やっているうちに、やがて「これはこれで、嫌いじゃないな」と感じてきます。
あとで振り返って、しみじみ「天職」と感じることが天職です。天職は結果として与えられるものです。最初から目標にしたり、探したりするものではないのです。自分の好みより、どうしたら人のために役に立つかを優先させている人が、選ばれる人になります。
好きなことが見つからないのではない。「稼げる仕事で、好きなこと」が見つからないだけだ。「好きな仕事がなかなか見つからないので、見つかってから頑張ろうと思います」と言いながら、家で寝転がっている人が大ぜいいます。「なんで仕事しないの?」と聞くと、「好きなことが見つからないんです」と言うのです。
「好きなことが見つからない」には、
(1)好きなことはあっても、それでは食べていけない
(2)食べていけても、その中に好きなことが見つからない
という2つの意味があります。
「好き嫌い」の軸と「食べていけるか食べていけないか」の軸とがあるのです。好きでもないし食べてもいけないことは、そもそもしようと思わないので誰も悩みません。
一方、経験もなく、勉強もしていないのに、都合よく「好きで食べていけること」ができるわけがありません。最終的には「好きで食べていけること」を目指すとしても、途中のプロセスは「好きだけど食べられないこと」と「食べられるけど好きではないこと」の2択です。
ほとんどの人が「好きだけど食べられないこと」を選びます。その結果、食べていけないので、だんだん続かなくなって、ついには行きどまりなります。「本には『好きなことを仕事にしなさい』と書いてあるじゃないか」「あの人は好きで楽しいことをしているじゃないか」と文句を言うのです。
中間点では、今は好きでなくても食べていけることを、自分なりにコツコツ頑張ります。そのうちに好きなやり方が見つかります。最終的に、好きで食べていけることにたどり着けるのです。
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は、『選ばれる人、選ばれない人。』(ぱる出版)など、1000冊を超す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授