自動車業界スタートアップをスケールする〜従来エコシステムとの融和に向けて〜視点(2/2 ページ)

» 2021年02月22日 07時05分 公開
[田村誠一ITmedia]
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 業界エコシステムへの融和ハードルも高い。デジタルガジェットと違い、自動車には極めて高い品質基準が求められる。品質不具合はppm(100万分率)で管理されると同時に、世界生産台数9200万台(2019年)規模への対応力が問われる。欧米アジア3極で安全基準や環境規制が異なり、地域横展開も容易でない。“業界特有のプロセスがスタートアップを過度に縛り付け、時間と努力を浪費する”(欧州OEM)。“俊敏さを失わない形での、創造力と業界エコシステムの融合が最大のチャレンジ”(欧州スタートアップ)。

※1"Good to Great"(邦題『ビジョナリー・カンパニー 2― 飛躍の法則』)の第3章より

オペレーティングモデルの変容管理

 ローランド・ベルガーの経験に照らすと、大手企業のスタートアップ投資は「変速グリッド」で管理することが有効だ。縦軸は伝統的なバリューチェーン要素を基に、各スタートアップの差別化要素を盛り込む。横軸はギアレベル。各スタートアップを、探索(Exploration)、導入(Implementation)、拡張(Scaling)フェーズのいずれかに位置付ける。目指すべきターゲットオペレーティングモデル(TOM)と現状のギャップを可視化する。これにより、貴重な外部調達資金と人的資源をどこに集中投下すべきかが明らかにする。(図A2参照)

 OEMやTier1サプライヤーは、MADE革命の嵐の中、新たな利益の源泉を獲得すべく、生き残りをかけてスタートアップ連携に対峙しなければならない。放任(1速)でも拘束(6速)でもない中間ギアの管理こそ、新たな業界エコシステム構築の第一歩だ。

著者プロフィール

田村誠一(Seiichi Tamura)

ローランド・ベルガー シニアパートナー

外資系コンサルティング会社において、各種戦略立案、及び、業界の枠を超えた新事業領域の創出と立上げを数多く手掛けた後、企業再生支援機構に転じ、自らの投融資先企業3社のハンズオン再生に取り組む。更に、JVCケンウッドの代表取締役副社長として、中期ビジョンの立案と遂行を主導、事業買収・売却を統括、日本電産の専務執行役員として、海外被買収事業のPMIと成長加速に取り組んだ後、ローランド・ベルガーに参画。


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