HRテックを活用したニューノーマル時代に必要な組織・働き方改革視点(2/2 ページ)

» 2021年07月12日 07時05分 公開
Roland Berger
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(3)従業員エンゲージメント:社員のメンタル状況やエンゲージメントの強さを定期的に測定し、先回りの組織施策につなげる。例えば、Uniposが提供する従業員同士が感謝の気持ちをピアボーナスとしてデジタル上で送りあうシステムなど、組織・企業文化をデジタルで醸成するソリューションも登場している。

(4)労務管理:従来の内製システムでは労務管理の複雑化に対応することは難しく、HRテックの導入によるペーパーレス化、効率化が有効な領域である。また、部門別の残業時間などの労務データを活用すれば、生産性の向上施策の検討につなげることもできる。

 グローバル化を推進するためにジョブ型を早期に導入した日立製作所は、HRテックを有効に使い組織・働き方改革を推進。世界中の社員をデータベースに一元化し、データドリブン人事を標榜しさまざまな施策に取り組んでいる。例えば、労働時間が同じエンジニアの2グループにおいて生産性に差があり、行動データを分析したところ「金曜日に残業するチームは生産性が低い」という結論が導かれた。そこで、同社では金曜日を定時退社日に設定するといった施策出し・トライアルを高速に回している。さらには、社内でカスタマイズしたHRテックソリューションの外販も行っている。

 このように、組織・働き方改革に有効な国内HRテック市場は急速に成長しており、HRテック市場規模は2020年の約500億円から、2024年には1700億円規模へ、急拡大する見込みである(ミック経済研究所)。

3、CXに向け、経営者はHRテックへの理解と 意識強化が必要

 HRテックは、単なる業務効率化手段ではない。組織・働き方改革とセットであるべき組織を実現するための経営手段であり、コーポレイトトランスフォーメーションを行ううえで必要なピースだ。従って、経営者が人事部門やIT部門に検討を任せきりというのは望ましくない。

 実際、人事部主導で導入しても、HRテックを効果的に活用しきれていないケースもでてきている。効果的なHRテック活用としては、以下の観点に留意すべきである。

 1. 前提として、経営者があるべき組織の姿を明確化する。 それを実現するために、どのような観点でHRテックを導入する のかという目的を明確化し、社内で共有する

 2. KPI、KGIを設定し、定量的に導入の効果を把握する

 3. 優先順位をつけ、スモールスタートではじめるさらには、増え続ける人事・組織周りのマネジメント負荷を、どうコントロールしていくかという観点も重要だ。

 例えば、当該領域の一部は非競争領域と捉えてグループ企業で協調していくという方向性も考えられる。大企業であればHRテック機能を内製化し、後に外販という事業の広がりもあるだろう。

 人事・組織周りをおさえることで、強い組織、動ける組織につなげることができる。ローランド・ベルガーはHRテックや組織・働き方改革についても豊富なプロジェクト実績や知見を有している。ご関心をいただいた方は、ぜひローランド・ベルガーまでご連絡いただければ幸いである。

著者プロフィール

福田 稔(Minoru Fukuda)

ローランド・ベルガー パートナー

慶應義塾大学卒、IESE経営大学院MBA、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院MBA EXCHANGE修了。電通国際情報サービスを経て現職。消費財、小売り、ネットサービスなどのライフスタイル領域を中心に、グローバル戦略、ビジョン策定、D2C、DX推進などの立案・実行に豊富な経験を持つ。シタテル社外取締役、IMCF社外取締役を兼務。


著者プロフィール

呉 昌志(Masashi Go)

ローランド・ベルガー プリンシパル

京都大学経営管理大学院修了。国内大手システムインテグレーターを経て現職。モビリティ/デジタル・IT分野を中心に、成長戦略、新規事業開発、海外市場参入戦略、BPRなど多様なコンサルティングサービスを展開。また、2016年より3年間、当社ソウルオフィスへのトランスファーを経験。


著者プロフィール

石毛 陽子(Yoko Ishige)

ローランド・ベルガー シニアプロジェクトマネージャー

東京大学文学部卒業後、日系投資銀行を経てローランド・ベルガーに参画し、東京及びシンガポールにて日本企業のアジア展開を支援。人材系ITベンチャーの役員を経て再参画。DX、全社戦略、組織改革やM&Aなど、幅広いプロジェクトを手掛ける。


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