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» 2016年06月02日 08時00分 公開

意志なきリーダーのもとで組織はひとつにならずビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

[石原正博ITmedia]
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日本企業にビジョンや目指す目的はないのか!?

 決して日本企業にビジョンや目的がないわけではありません。逆に言えば、ありすぎるということが問題になってくるのです。

 ある企業では、経営幹部が社員に対してそれぞれ次のようなことを言っています。

A役員「今はとにかく売上第一!」

B役員「なんといってもお客さまが第一」

C役員「チャレンジだ! 意識改革だ!」

D役員「まずはコストを下げて足元をしっかりさせること!」

 また多くの企業を見ていると、会社案内やホームページでは経営理念やミッション、ビジョン、バリュー、行動指針といったような企業として目指すべきもの、守るべきものを目にすることがあります。更には中期経営計画や年度毎の事業計画、各部門内で作られる方針書などにも方向性やビジョンなど目的に関するものが多数挙げられているのです。

 一つひとつのメッセージを見ていくと、言っていることはとても重要で決して間違ってはいないのでしょう。しかし、さまざまなメッセージを受け取る側の社員にとってみれば、一体会社は何を目指そうとしているのか、軸足をどこに置けばよいのかが見えなくなってしまうのです。そして、このことが社員一人ひとりの日常業務を進めていく上での判断基準をばらばらにさせ、取り組むべき課題への各自の勝手な解釈による優先付けが行われ、社内の一体感は失われてしまっていたのです。

トップは自らの意志をビジョンとして伝えなければならない

 社内にはびこる部分最適の問題を解決するために、組織はひとつの方向に向かってベクトルを合わせていかなければならないわけですが、それでは一体、さまざまなビジョンや目的らしきものの中で、どこに向けてひとつになっていくべきなのでしょうか。ここで一番重要なポイントは組織のトップリーダーが「自分はどうしたいのか」という自らの意志を明確にし、そして発信していくことなのです。それこそが組織をひとつに束ねリードし、全体を最適化していくための重要なポイントとなるのです。

 会社のビジョンを外部のコンサルや、社内のプロジェクトチームに作らせることがありますが、そこで出来上がったものに対して仮にトップがコミットしたとしても、どこまで本気度と責任を持てるでしょうか。自らが心底抱く野心や願望を実現したいと思うからこそ本気のリーダーシップをとることができ、また非常に重い責任を負うことができるのです。そして、それに見合う権限と報酬を得ることができるのです。

 自分の意志を伝えるというと「果たして社員や部下は付いてくるだろうか」という不安が出てくるかもしれません。私は、これまで多くの企業を支援する中で、トップが自らの意志を社員に伝える場面に幾度となく立ち会ってきました。大抵の場合、それを聞いた社員は「そういう言葉を聞きたかった、あるいは待っていた」というような反応を示すとともに、顔の表情が少しずつ穏やかに変わっていくのが分かるのです。トップ自身が顔を突き合わせながら、生身の言葉で「自分はこうしたい」をリアルな場で伝えることでメンバーは動機付けられ、行動を起こす原動力を持ち始めるのです。

 近年の日本の代表的な経営者と言えばソフトバンクの孫氏や日本電産の永守氏、ユニクロの柳井氏などが挙げられますが、彼らは明確なビジョンや方向性を持ち、それを社員にしっかりと伝えています。彼らの会社の社員に話を聞くと、会社の方向性とそれを発信している人物の顔が常にワンセットのイメージとなって伝わっているのです。会社として一体感のない企業では、ビジョンや方向性は掲げられているものの、すぐに社長の顔が浮かんでくるようなことは稀で、そもそも誰がそのビジョンを発信しているのかも分からないのが現状なのです。

 「トップ自らが意志を明確にしてビジョンとして発信し、組織をリードする」と聞けばとても当たり前のことのように感じます。しかし、この極めて当たり前のことが出来ていないがために、組織はまとまりをなくし、手段の目的化が蔓延し、改革は進まなくなってしまっていたのです。

著者プロフィール:石原正博

1969年東京都生まれ。1992年学習院大学法学部を卒業し、安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入社。法人営業、企業年金制度コンサル、経営企画業務等を経験。2005年1月株式会社スコラ・コンサルトに入社。大手企業を中心に20年間で500社を超える企業への支援を行い、企業改革のノウハウを修得。2011年独立し株式会社センターボードを設立。現在、株式会社センターボード・代表取締役、全体最適化コンサルタント


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