すると徐々に従業員たちから、「こうしたい」という言葉が出てきます。それに対して星野さんは、「あ、いいんじゃないですか。じゃあそれで行きますか?どうします?」。「それで行きます」と言わされるシーンがありました。
部下が、このことについて証言した言葉を、伊庭さんは今でも明確に覚えているそうです。「社長は私たちを主役にしてくれるんです」。これですね。
星野社長がなぜそういうマネジメントをするに至ったかは、かつては「方法はトップダウン、やり方もトップダウン」で、離職者を続出させてしまった、つらい経験があると番組の中で述懐していたそうです。
長期的に強い組織を作るための仕組みは、「部下の声を聞く仕組み」を持っていることです。最近流行りの1on1面談や1on1ミーティングもその1つですし、星野社長のチームでミーティングをしながら提案の機会を持つのもその1つです。
ドラッカーは「リーダーの仕事が変わってくる。今までのリーダーは指示をすることだった。これからのリーダーは聞くことが仕事になる」と言いました。
ブームとも言える1on1面談ですが、確かに「1on1以前」の日本企業の「個別面談」は考課面談くらいしかありませんでした。それも、すり合わせなしの給与の通達(のみ)という企業が多くあったようです。皆さんの会社はどうでしたか。
あるいは営業部などで、上司から個別に呼び出しがかかるパターンでしょうかね。大概の場合、「おい、この業績、どうなってるんだ」と詰められる場面でした……。
さて、現在の1on1面談ですが、昭和・平成の個別面談とは異なり、「部下の話をしっかり聞きましょう」という設定となっています。しかし、聞くのは良いのですが、ただ聞きっぱなしで、ちゃんと受け止め対応する形になっていない企業も多くあるようです。それが結果として、中堅以下の社員の大量離職につながってしまったという笑えない話を私も某社から聞きました。
あるいは1on1面談と言いながら、やはり今でも営業会議やツメ会議になってしまっているところもあるみたいですね。
1on1実施についてのリクルートの調査で、約3割の会社は「やらないほうがいい」という調査結果もあります。かたちだけで1on1をやっても、上司にスキルがないので何をやっていいのか分からない。1on1は部下の話を聞く場ですが、その「聞く力」がない。聞くことができずに、我慢できずによかれと思って独善的なアドバイスをしてしまう。
そもそも上司に「聞く力」がないと、1on1面談をしても効果が出ないのが実情です。ですから、1on1は「聞く力」とセットですね、という話をトークライブで伊庭さんと私でしました。
では、どう「聞く」のが良いのか。次回、具体的に紹介します。
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授