ファンマーケティングは買わせるマーケティングではないビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2024年05月16日 07時04分 公開
[高橋遼ITmedia]
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 ファンはサービスを提供されるのを待つだけの受け身の存在ではなく、企業と共に価値を生み出すパートナーです。サービスが提供されるのをただ待ち、サービスを消費するだけの顧客を本当のファンと呼べるでしょうか。確かにそのような顧客も存在し、彼らが再びサービスを利用し、購入量も増えていく可能性があります。その前提としてサービスを受け取り、利用し続けるだけでもファンの好意度は一定量高まる可能性はあります。特に複雑なサービスであればあるほど、一度利用してくれた顧客をオンボードし、ロイヤルカスタマーへと導くこともできるかもしれません。

 しかし、カスタマーサポートにとどまらず、ファンの持つ資産にアクセスするためには、ファンを価値共創のパートナーと定め、共にサービスの価値を生み出すような働きかけが不可欠です。実際にファンに会った経験あれば、ファンがただサービスの改善について口を開けて待っているだけの存在ではなく、一緒に価値をつくっていく姿勢を伝えてくれる存在であることを実感しているかもしれません。ファンが求めるのは画一的なサービスの提供ではなく、ファンならではの経験ができることです。

ファンコミュニティが失敗する理由

 ファンと触れ合う場として注目されているファンコミュニティそのものは、うまく活用することでファンという資産を生かせる場になりえます。しかし、ファンコミュニティには運用するうえで、陥りやすい落とし穴がいくつかあります。

【失敗の要因1】本当のファンがコミュニティに参加してくれていない

【失敗の要因2】ファンがコミュニティで活動してくれない

【失敗の要因3】コミュニティでファンの熱量が高まらない

【失敗の要因4】コミュニティ内の LTV( 顧客生涯価値)を高めてもビジネスインパクトが生まれない

【失敗の要因5】コミュニティ運用の ROI(投資対効果)が合わない

 よくクライアント企業から「ファンを囲い込みたい」と言われます。しかし、ファンを囲い込むことは企業の都合でしかなく、ファン自身は「企業に自分のことを囲い込んでほしい」とは思っていないかもしれません。果たして、ファンを囲い込んだ先には何があるのでしょう。

 「ファンに対して同時に、画一的に情報を届けるチャネルが欲しい」「ファンの購入量への貢献を可視化したい」の2つがあります。

 前者は自社の「いけす」にファンを囲い込むことによって、情報に一斉にリーチさせるための「メディア」を欲していることと同じです。ですが先述した通り、ファンが望むのは自分にしかできない「個別の経験」です。ファンを囲い込み、どのファンにも同じ情報を届けたとしても、必ずしもファンの好意度が高まっていくことにはつながりません。

 また、後者のファンの購入量への貢献については、それを計測することによるビジネスインパクトが証明できない場合は、ただファンを管理するためだけの手段になってしまう可能性があります。そのため、ファンの購入量の可視化のために囲い込みをしようとしている場合には注意が必要です。

著者プロフィール:高橋遼

株式会社トライバルメディアハウス クリエイティブディレクター

ファンを軸としたマーケティング戦略・実行に従事し、これまでに航空会社、ファッションブランド、スポーツブランド、化粧品ブランド、飲料メーカーなどを支援している。2020年よりヤッホーブルーイングのエア社員に就任。宣伝会議『ニューノーマル時代のブランド戦略から考える顧客獲得講座』『ファンイベント講座』などの講師を担当。著書に『熱狂顧客戦略』(翔泳社)。


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