ビジネスアナリシスとは、価値の実現に責任を持つものである。BABOKが定義するビジネスアナリシスとは、「ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにチェンジを引き起こすことを可能にする専門活動」となっている。これはまさにDXそのものとも言えるだろう。
ここで、DX(Digital Transformation)の本質について、再度考えてみたい。デジタル技術はあくまで手段であり、DXにおいてはデジタルによる「トランスフォーメーション(変革)」が本質と言える。DXで求められているものは、まさにビジネスアナリシスでいうCHANGE(変革)に他ならない。日本企業は経路依存性で、なかなかその体質を変革することができない傾向にある。だからこそ、日本では企業を丸ごと変えるCX(コーポレート・トランスフォメーション)が必要なのだ。つまり、日本において必要なDXとは「変化の時代に柔軟に、かつスピーディに対応できる企業に変わること。イノベーションを起こせる企業に変身(CX)すること」とも言えるだろう。
また、DX推進において大切なことはビジネスのニーズを明らかにすることである。しかし、ビジネス部門も真のニーズを理解していない場合もある。潜在的な顧客のニーズは丁寧に分析していかないとわからないものだ。DXにおいては、何をやるのか、どういう価値を創出するのかというWHY、WHATを深掘りして分析していくことが重要だ。DXにおいてもパーパスを掲げ、ありたい姿を描かなければならない。また、業務プロセスの可視化や意思決定プロセスの可視化、他業界のさまざまなビジネスモデルの知識も必要となる。DX推進のためにはビジネスアナリシスがますます重要となってくると言えるだろう。
これから、日本企業でもDXを推進できる人材、ビジネスアナリシスのスキルを有する人材がますます必要とされている。ビジネスアナリシスとは、いわばメディエーター(仲介者)であり、ネゴシエーター(交渉人)であり、トランスレーター(伝達者)でもある。ビジネスアナリシストが働きかけるのは「人」なので、人間力をベースとするソフトスキルが求められる。ビジネスアナリストとして事業を変革し、ステークホルダーをまとめる上において、人間というものをよく知り、人間力をつけていくことが大切と言えるだろう。
この人間力に必要なのは、儒教などで言われる礼・智・信・義・勇・仁といった徳目や、愛の心とも言える。愛とは「他に関心を持ち、思いやること」。つまり利他の心でもある。利他の行為こそが自らを幸せにするとも言われる。見返りは考えずに無条件で与え、愛を行動で表し、感謝の心を持って、相手に真に必要なものを考える知恵を持つことが重要なのだ。
「まずは魁より始めよで、気づいた人から愛の実践をスタートして欲しいですね。まず笑顔で挨拶することからスタートしてみてください。挨拶をする人が増えると、職場のウェルビーイングが倍になり、生産性・創造性も上がります。愛の視点を持って経営を行う、利他の心で社会貢献を行うビジネスほど発展するような世界を作っていきたいですね」(寺嶋氏)
「ビジネスアナリシス、DXといったビジネスにおいても愛の視点を持つことが重要である」と寺嶋氏は締めくくり、講演を終えた。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授