共感型リーダーシップを実現するために、すぐにできる手法を2つ紹介しましょう。
1つ目は、「隙間1分間の雑談」です。
職場におけるほんの短い雑談(インフォーマル・コミュニケーション)は、人間関係を強め、生産性を高めることが分かっています。少しずつ無理なく絆が芽生え、突発的なトラブル時にも、頼みごとがしやすくなりますが、勤務時間中に長々と話すのは、かえって生産性を低下させますし、相手に疎まれることもあります。
効果的なのは、継続性のあるほんの短い雑談です。例えば、給湯室で、部下と会ったとします。「お疲れ様」だけで済ますのではなく、あと一声、このように話してみてください。
上司「あ、〇〇さんって、何か趣味とかあるの?」
部下「実は、スノーボードが好きで、大学でやっていました」
上司「いいね、スノーボードか……。じゃあ、お先に」
このくらいで十分です。
そしてまた次の機会、エレベーターや備品置き場などで会ったときに、その続きをちょっと話します。
上司「〇〇さん、スノーボードやってたんだよね。結構うまいのかな?」
部下「実は、インストラクターの資格も持ってて……」
上司「インストラクターの資格かー。それはすごいね!じゃあ、また」
といった感じです。このような短い雑談の繰り返しが、実は、無理なく人間関係を強めるのです。
2つ目は、5つのタイプ別コミュニケーションです。
よかれと思って口にした言葉が、裏目に出てしまうことって、ありますよね。このようなコミュニケーションギャップは、相手と自分の好むコミュニケーションスタイルが異なることによって起こります。そして、好むコミュニケーションスタイルというのは、その人のパーソナリティによって、ある程度予測できます。さらに、パーソナリティというのは、大きく5つに分けて考えることができるのです。
E:外向性(Extraversion)
N:神経症傾向(Neuroticism)<悩む人>
A:協調性(Agreeableness)
C:勤勉性/誠実性(Conscientiousness)
O:開放性(Openness)
「外向性」の人は、外へ外へというエネルギーに満ちた人です。物事への集中力があり、飛びつきやすく飽きっぽい人もいます。「すごいね!」「いいね!」といったざっくりとした誉め言葉も喜んで受けとってくれる人が多いです。
「神経症傾向」は、根拠のない心配性。何度も確認するので、ミスが少ない人です。そのまま聞き流すということをしないので、質問が多い人もいます。「何かあったらいつでも言ってね」など、常に対応する姿勢があることを伝えると、安心してくれます。
「協調性」は、人の気持ちに敏感で、配慮し、サポートする人です。相手もそうだと思ってしまうので、簡単に人を信頼し、騙されても気づかないこともあります。「いつもありがとう」といった言葉が響きます。
「勤勉性」は、自分で決めた通りに物事を進める人です。継続力があり、有能なので、人からの助言に耳を貸さない人もいます。「任せるよ」「さすがだね」など、一目置いた雰囲気の言葉が効果的です。
「開放性」は、頭脳活動を楽しむ自由人です。創造力に富み、次々にアイディアが浮かびます。半分上の空で人の話を聞くことがあるので、ひらめくと、関係ない話をし出す人がいます。「驚いた」「それは思いつかなかった」など、相手の独創性にフォーカスするのがお勧めです。
先月発売になった新刊には、早稲田大学オープンカレッジ心理学講座の中で行った、5つのタイプ分けを用いたディスカッションの様子が掲載されています。それぞれのタイプの人が、具体的にどのようなコミュニケーションを好むのか? リアルな声が参考になると思いますので是非読んでみてください。
巻末には、12の質問で簡単に5つのタイプ分けができる診断シートも掲載しました。共感型リーダーシップの「対話」に、ご活用ください。
作家・心理学者・心理コンサルタント。東京都出身。文学修士(コミュニケーション学)。早稲田大学オープンカレッジ講師。テレビ、ラジオ、雑誌など、メディアでの心理解説実績多数。現在は、大学院博士課程に在籍し、研究を進めるとともに、執筆・講演・心理監修などの活動を行っている。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授