成功するリーダーの最も重要な洞察と選択「第3の案」ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2012年04月05日 08時00分 公開
[竹村富士徳,ITmedia]
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第3の案と真逆の思考は“二者択一”

 第3の案の中身の前に、今の時代を反映するこの思想とは真逆の思考を紹介しましょう。それは“二者択一”思考です。そこにはシナジーは存在せず、競争のパラダイムであり、ジレンマと妥協を生じさせます。

 「こちら対あちら」「自分対他人」「長期対短期」「右対左」「保守対革新」「被害対加害」「質対量」「理念対財務」「勇気対思いやり」……数え上げたら切りがないほどのいわば“対立”思考であり、ビジネスを含めたどのような環境でも間間見受けられる状況でもあります。

 「資本がもっとなければ、ビジネスを成長させることはできない。しかし、ビジネスをもっと成長させなければ資本も増やすことができない……」「数値を上げるためにはクオリティを向上させなければ、しかし、そのためには数値を上げなければ……」「この案件をとれば今月の業績は安泰だ。しかし、長期的には打撃となる……」

 どの状況も典型的なジレンマを生み出し、第3の案を生み出すリーダーシップがなければ、どちらかだけを生かす、もしくは解決策もないまま傍観する、または妥協します。妥協は当事者が双方の利益の一部を譲り、犠牲、もしくは放棄するということであり、小さなWin-WinがややもすればLose-Loseであり、双方の関係は弱まり対立はいずれ再燃するかもしません。

 第3の案を生み出すリーダーシップは次の4つのステップから成り立ちます。まず(1)Win-Winの態度と思考、(2)お互いの成功定義、(3)第3の案の創造、(4)シナジーへの到達です。

 第4の習慣で紹介されているWin-Winを生み出すためには、勇気と思いやりが高いレベルで発揮されていなければならず、ジム・コリンズが提唱した第5水準のリーダーシップでも全く同じことが結論付けられています。

 成功の定義は、相手の話と意図に耳と目を向けることから始まります。これまでの成功および失敗体験や自分の中の結論付けは横に置き、ただ純粋に相手の視点を理解するためだけに「聞く」のではなく「聴き」ます。そうして初めて相手のパラダイムとロジックに合わせる、もしくは配慮して自分のパラダイムとロジック、そして意図を伝えることができるようになります。

 ここから自分の案(第1案)ではなく、相手の案(第2案)でもない、双方を含めてそのお互いのニーズを満たす第3の案を一緒に創造していきます。それはクリエイティブなコミュニケーションであり、これまでにはなかったアイデアを違った観点から生み出していきます。古いものを新しい方法で取りまとめ、自分たちの固定観念を逆さまにしてみる。ダイバーシティの原則を活用し、まさにイノベーションを生み出す瞬間でもあります。解決策は必ずあると信じて、自由に意見を出し合い、興奮に包まれ、シナジーに達したというひらめきを全員が実感できる瞬間まで、一切の判断を差し控えます。

 歴史上の偉大な人物たち、例えばキング牧師、ガンジー、坂本龍馬にしろ彼らは二者択一思考ではなく、第3の案によって偉大な業を成し遂げました。現在のビジネスにおける成功も第3の案というパラダイムで眺めてみた時に、多くの事例を見出すことができます。

 この混沌とした先行き不透明な時代にあって、組織の問題を解決し結果を導く鍵は第3の案にあります。リーダーとして、第3の案を生み出す原則とパラダイム、必要なスキルを身につけ、それを習慣として人格的な強さを形成していく。この第3の案は、今あらゆる組織のリーダーたちに求められ、新しい時代を築く大きな鍵となるのではないでしょうか。

著者プロフィール:竹村富士徳

1995年、フランクリン・プランナーを企画販売するフランクリン・クエスト社の日本法人に入社。1998年合併によりフランクリン・コヴィー・ジャパンになったが、取締役として経営そして米国本社との折衝に携わる一方で、セミナーの開発や講師、経理全般、人事、プランナー関連商品の開発、販売、物流など多岐に渡って担当。

現在は同社にて出版をはじめとするB2C事業、オペレーションなどを統括すると同時にファシリテーターとしても活躍。実践に裏打されたコンテンツへの深い理解が、ファシリテーションの強力なバックボーンとなっている。また2012年1月、筑波大学客員教授に就任。著書「タイム・マネジメント4.0」


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